患者自身の血小板によるテニス肘の治療に成功したという報告が、医学誌「American Journal of Sports Medicine」11月号に掲載された。米スタンフォード大学(カリフォルニア州)メディカルセンターのAllan Mishra博士らによるもので、重症患者の外科手術を回避する手段になると期待される。
この方法は、患者自身の多血小板血漿を損傷した腱に直接注射し、血小板の自然治癒力によって腱の断裂や擦り切れを修復するというもの。多血小板血漿の利用はもともと歯科分野で開発されたものが、現在では体のさまざまな部位の腱および靭帯の修復や、創傷治療、骨の再生などに利用されている。血小板は血液の凝固を助ける血液成分だが、回復を促進する強力な増殖因子も含まれている。慢性腱炎の治療に患者自身の増殖因子を用いた研究は、これが初めてとのこと。
Mishra博士らは、経時的にも理学療法によっても改善のみられなかった重篤なテニス肘患者20人を対象とし、今回の研究を行った。15人には患部に多血小板血漿を注射、残り5人には注射をしなかった。処置1日後より2週間のストレッチプログラムを開始し、1カ月後には通常のスポーツおよびレクリエーション活動の再開を許可した。
6カ月後、多血小板血漿治療を受けた患者では、疼痛スコアに81%の改善がみられ、2年後には処置を受けた患者の93%が治療に十分満足しており、7%がある程度満足していると答えた。治療を受けた患者のほとんどが通常の生活に戻っており、90%以上が仕事やスポーツを再開している。Mishra氏らは240人の患者を対象としたより大規模な研究を実施中で、「この処置は重度の慢性腱炎の安全かつ有効な治療法となる可能性がある」と述べている。
メジャーリーグ(MLB)、ピッツバーグ・パイレーツの担当医も勤めるスポーツ医学専門家Michael A. Scarpone博士によると、博士自身この方法で100例を超える腱板断裂を治療しており、スポーツ界では急性期の治療にこの処置が利用されているほか、外科手術など他の治療法と併用もされているという。腱や靭帯への利用は今後さらに増え、将来この方法が重症腱炎の標準的治療となるとScarpone博士は予測している。
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関節に負荷のかかるスポーツには靱帯損傷が付き物ですからね。テニスだけでなく野球にも応用できるでしょう。サッカーなどの膝の痛みも取れるかもしれません。