バイオテク企業のノボセル(Novocell)はヒト胚性幹細胞(ES細胞)をインスリンなどホルモンを分泌する膵臓細胞に変えるプロセスを開発し、ネイチャー・バイオテクノロジー誌オンライン版に発表した。臨床試験を早ければ2009年に開始する見通しで、自力ではインスリンを分泌できない1型糖尿病の治療への応用に期待している。
ニューヨーク・タイムズによると、ヒトや動物の幹細胞を利用しインスリンを生成させる研究はこれまでもあった。しかし、バンダービルド大学のマーク・マグヌソン教授らによると、同社技術は細胞変換とインスリン生成の効率性を画期的に向上できるという。
一方、マグヌソン教授は、研究では細胞はグルコース値に応じてインスリン生成量を変えることがあまりできなかったと指摘。これに対し、ノボセルのエマニュエル・ベツゲ最高科学責任者(CSO)は、細胞は「完全に成熟しておらず」、むしろ胎児のベータ細胞に近いと説明している。グルコースへの反応は胎児が生まれてから獲得する機能で、胎児のベータ細胞もグルコースに反応しないことがわかっている。
研究では、胚の細胞が膵臓細胞に成長する過程を模倣し、ES細胞に様々な成長因子を加えたり除いたりすることでインスリン生成細胞を作った。この課程は全部で16〜20日だった。
今後は2008年に細胞の動物実験を行い、良好な結果が得られれば2009年に臨床試験を実施する。
他人の膵臓の細胞を1型糖尿病患者へ移植する治療は実験的に行われており、一部でインスリン注射の必要がなくなるなど効果も確認されている。しかし、ほとんどの患者で効果は2年で消滅し、移植用臓器が少ないことも問題になっている。
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もしこれが成功したら画期的ですね。膵臓移植は難しい上に、数もそんなにありませんから。ですがインスリンが不可欠な糖尿病患者は、新しい膵臓を欲してやまないでしょう。毎食前に注射をするなんていうわずらわしさがなくなるわけです。
臓器移植数が増えないなら、膵臓細胞そのものを作ってしまえばいい、という考えですが、うまくいくにはまだ時間がかかりそうです。仮に膵臓細胞を生成したとしても、インスリンが膵管から分泌されるよう、うまいこと体内に入れられるのかなど問題点はありますが、技術そのものは加速度的に進歩しています。期待しつつ待つことにしましょう。
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