魚類摂取には、汚染物質などによるリスクを大きく上回る健康面での効果があることが、2つの研究で明らかにされた。米ハーバード大学(マサチューセッツ州)による研究は、米国医師会誌「JAMA」10月18日号に掲載、もう一方の米国医学研究所(IOM)助成による研究は、IOM報告書「Seafood Choices: Balancing Benefits and Risks」で発表された。
サバ、サケ、イワシといった脂肪分の多い魚に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などのオメガ-3脂肪酸は、胎児や乳幼児、小児での神経系の発達を助け、成人ではコレステロール値を下げ、心疾患を予防する働きがある。しかし魚類には、メチル水銀などの工業毒が含まれるという負の側面もある。
ハーバード大学の研究からは、脂肪の多い魚なら、週1〜2回摂取するだけでも死亡率が17%低下し、冠動脈疾患による死亡率は36%低下することがわかった。心疾患予防には、サケを週1回、6オンス(約170g)食べるだけでも十分で、魚油サプリメント(栄養補助食品)で代用も可という。しかし、オオサワラ、サメ、メカジキ、アマダイなど水銀含有率の高い魚は、妊婦は避けるようにとのこと。IOMでは、妊婦および12歳未満の小児は、この4種類を除く魚介類を週に12オンス(約340g)以上摂取するよう推奨している。
しかしこの量は、体の小さい小児では水銀過剰摂取につながるという批判もある。また同じ魚料理でも、脂肪の少ないタラなどを不健康な油で揚げた出来合いの魚フライでは、魚食の利点が打ち消されるばかりか、かえって悪影響をもたらすという。サケの缶詰は、原料がオメガ‐3脂肪酸含有率の高い野生サケであることが多く、経済的にも賢い選択だという。
米国心臓協会(AHA)では、心疾患患者で1日1,000mg、健康な人で1日500〜1,000mgのオメガ3-脂肪酸摂取を推奨している。3.5オンス(約100g)当たりに含まれるオメガ-3脂肪酸は、イワシのオイル漬けで約3,300mg、サバ2,500mg、ニシン1,600mg、サケ1,200mg、カワマス500mg、エビやヒラメで300mg。サプリメントの場合、「魚油1,200mg」と表示されていてもEPAやDHAの含有量は20%程度のことが多いので注意が必要とのこと。
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昔から魚と水銀との関係は指摘されています。工場で垂れ流しにしたメチル水銀は確かに魚の体内に蓄積されます。が、今回のデータでは「そんな水銀を気にするより魚食わないと将来心臓疾患で死ぬよ?」ということが裏付けられた形となりました。
とはいえ妊婦や幼い世代の子供に関しては、心臓疾患の危険性もありませんし、できるだけ水銀を摂らないようにしたほうが無難でしょう。特に妊婦の場合、子供に悪影響が出るか未だに分からない状態ですからね。魚とはうまく付き合っていきたいものです。