「生涯に消費するエネルギー量が増大しても寿命が短縮する心配はない」とする研究結果が、米バージニアビーチで開催された米国生理学会(APS)で報告された。「rate-of-living」説という学説によると、生物が生涯に消費できるエネルギー量は一定であり、これを超えると健康が衰え、死に至るとされている。この説を否定する証拠はこれまでにも多く出されているが、今回の研究がさらなる証拠となるという。
米カリフォルニア大学リバーサイド校生物学教授のTheodore Garland Jr.氏らが行なった今回の研究は、マウス300匹を用いたもの。このうち200匹は、何世代にもわたって回し車で走ることを好むよう品種改良された「ランナーマウス」で、うち100匹には回し車を与え、100匹には与えなかった。残る100匹は標準的な研究用マウスで、回し車を与えた。回し車を与えられたランナーマウス群は、ほかの2群に比べて生涯に消費したエネルギー量が25%多かったという。
「rate-of-living」説に従えば、よく運動したマウスほど寿命が短いはずだが、ランナーマウスの運動群の平均寿命は735日、非運動群は725日と、実質的な差がみられなかった。また、標準マウス群と非運動ランナーマウス群はエネルギー消費量が同じで平均寿命も同じになるはずだが、標準マウス群の平均寿命は826日と最長寿だった。この寿命の差は代謝の違いのせいではなく、30世代以上にわたり別々に繁殖されたことによる遺伝的相違など、ほかに何らかの要因があるのではと考えられるという。
さらに各群それぞれ40匹について、エネルギー消費量、身体組成および心臓と肝臓の抗酸化酵素レベルが調べられた。運動量が増えると代謝率が上がり酸化ストレスも増大することから、運動ランナーマウス群では抗酸化酵素レベルが高くなると予想されたが、月齢2カ月、10カ月、18カ月、26カ月における測定で3群の間に抗酸化酵素レベルの差はみられなかった。
今後の課題は、酸化ストレスに対して心臓と肝臓以外の組織で抗酸化物質の産生増大がみられるかどうかを検証するほか、運動量が多いとDNA修復率が上昇するというような別の可能性を検討することだという。「いずれにせよ、適度な運動が免疫機能や心疾患、精神面などで健康にさまざまな恩恵をもたらすことは疑いようのない事実だ」とGarland氏は述べている。
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そもそも運動しないほうが長生きなんて説が存在していたとは。でも色々覆されているようですので、安心して運動してください。鍛えることは損には繋がりません。どうしても老化で衰えるので、カバーしていく感じで。