全世代を通して“場の空気が読めない”日本人が増えている。職場の雑談やパーティーなどでその場の雰囲気が分からないのに首を突っ込み、雰囲気を乱したり、煙たがられる人々だ。一対一で話していても相手の真意をくみ取れず、得意先などを困らせる。昔風に言えば、ボンクラか。「ぼんやりしてる」「まぬけ」などの意味もあるが、その場の空気を読めない点では同じである。もちろん、話し相手の微妙なニュアンスも理解できない。
コミュニケーション作法に詳しい神戸女学院大学の内田樹教授は言う。「空気が読めない人は“コミュニケーション感度”が悪いんです。会話において言葉が伝える情報は全体の10%程度で、あとの90%の情報は非言語的なものを介して伝わります。表情や姿勢や音調が、言葉をどう解釈すべきかを教えてくれる。でも、その非言語的なシグナルを読めない人が増えています」
そのためか、上司と部下、夫婦、親子間でさまざまなトラブルが起きている。「そんなつもりで言ったんじゃ……」というフレーズはコミュニケーション不調の典型的な兆候だ。逆に相手の心中を察する力があれば、上司のやりたいことがパッと分かり、仕事の効率は数段アップする。以心伝心なら、夫婦関係も円満だ。
どうすれば、その場の空気を読む力をアップさせることができるのか? 内田教授が勧める効果的な方法は次の3つだ。
●自然をジッと見つめる
海、雲、動物などの動きをジッと見つめて観察する。
「たとえば、流れる雲を見つめる。雲のかたちが変化して見えるのは、“もうそこにはないもの”の残像が見え、“まだそこにはないもの”が予見されるからです。そうでなければ、『雲のかたちが変化した』ということに気づくはずがない。雲の動きにある種の階調を感知することができるのは、実は私たちが過去と未来を行き来しているからです。会話でも同じこと。“もう聞こえない言葉”がまだ残響し、“まだ聞こえない言葉”が先取りされているからこそ私たちは言葉の意味がわかる。適切なコミュニケーションのためにまず学ぶべきものがあるとすれば、それは自由に時間の中を行き来する能力です」
●集団で動く
幼児期に集団で遊ぶ訓練をした子供は大人になってもコミュニケーションがうまい。
「大人だって集団で動きが合い、呼吸が合えば身体レベルである種の一体感を得ることができます。武道の型稽古やダンスなども同じです。他者の身体と細胞レベルでの流れの一致感が経験されたら、もう言葉なんか要りません」
●育児を体験する
「赤ちゃんは言葉をまだ知りません。だから大人は赤ちゃんの発する意味不明のノイズを意味のあるシグナルに変換して、“赤ちゃんが言いたいこと”を聴き取らなければならない。わずかな表情の変化や息づかいや、こちらからかける言葉への反応をたよりにして、コミュニケーションを立ち上げなければならない。これほどすぐれたコミュニケーション能力の開発訓練はありません」
40、50代のオジサンにはこれから子育ては無理。孫の面倒を積極的に見たり、親戚の幼児と一緒に遊んだりするのがいいかもしれない。コミュニケーション感度をアップできれば、場の空気も読めるようになる。今日から訓練してみては。
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なるほど…。私も誤解がキライなタイプなのですが、それには私自身のコミュニケーション能力に問題があるのかもしれません。恐らく、あるのでしょうね。私も相手にも。
集団の中で、話術で場を取り仕切るタイプの人はおそらく発育段階から、そういう能力をはぐくむ場が提供されてきたんだと思います。ですが今からでも鍛えることは可能です。気づかなかった部分に気づく努力をすればいいわけですから。新たな視点を得ることは人生をも豊かにします。