奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医5人が04、05年の超過勤務手当の未払い分として計約1億円の支払いと、医療設備の改善を求める申入書を県に提出したことがわかった。医師らは「報酬に見合わない過酷な勤務を強いられている」と訴えており、要求が拒否された場合は、提訴も検討する方針。
県によると、同病院の年間分娩数は05年度で572件。産婦人科関連の救急患者は年間約1300人にのぼる。産婦人科医が当直をした場合、1回2万円の当直料が支払われるが、当直の時間帯に手術や分娩を担当することも多いという。
申入書によると、当直について労働基準法は「ほとんど労働する必要がない状態」と規定しており、実態とかけ離れていると指摘。当直料ではなく、超過勤務手当として支給されるべきで、04、05年の当直日数(131〜158日)から算出すると、計約1億700万円の不足分があるとした。現在9床の新生児集中治療室(NICU)の増床や、超音波検査のための機材の充実なども要求している。
医師の一人は「1カ月の超過勤務は100時間超で、医師の体力は限界に近い。更新期限を過ぎた医療機器も少なくなく、これでは患者の命を救えない」と訴える。
県は、産科医を1人増員するなどの改善策に乗り出すとともに、医療設備の改善を検討しているが、超過勤務手当の支払いは拒否した。担当者は「財政難のため、すべての要求に一度に応えるのは難しい」と説明する。
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医療費削減のために、一番負担を強いられているのは現場にいる医師でしょう。研修医や熱意のある現場の医者の給料は、時間に見合ったものではありません。特に大学病院の研修医などは、マクドナルドでバイトする高校生よりも安い時給で働いていますからね。
今までも労働基準法に反しているという訴えは数多くありましたが、見て見ぬふりをしてきました。医師に「労働に見合っただけの給料」を払えばどこかがマイナスになるからです。しかしそんなことが許されるはずもなく。この訴えは明らかに正当なものですから、どういった判決になるのか非常に興味深いですね。(認められたら認められたで財政圧迫は必至でして、もし厚生労働省が別の所からカバーしようとすれば医療サービスの質の低下に繋がることも明確ですが)
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