米国では何百万という人が秋のブタクサ花粉症に悩まされているが、長期効果の期待できるワクチンが数年以内に登場しそうだ。従来のアレルギー減感作療法では何年間にもわたる注射が必要だが、新しいワクチンは短期間の治療で数年間効果が持続するという。この研究は、米医学誌「New England Journal of Medicine」10月5日号で報告された。
米ジョンズ・ホプキンズ大学(ボルチモア)喘息アレルギーセンターのPeter Socrates Creticos博士らは、アレルギー反応での主な要因であるヘルパーT細胞(Th2)による炎症に注目。Th2の作用を停止させる細菌由来のDNA配列を見つけ、ブタクサ花粉細胞の一部にこの配列を付けたワクチンを開発した。ワクチンがTh2の反応を抑えることにより、くしゃみや涙目の原因となるIgE抗体の生成も抑えられる。免疫反応を抑えるアレルギーの薬物療法は、すべてを標的とする大砲のようなものだが、このワクチンは標的を狙い撃ちする特異性が高いもので、少ない副作用で大きな効果が得られるという。
Creticos博士らは、ブタクサ花粉アレルギーのある23〜60歳の被験者25人を対象に臨床試験を実施。ブタクサ花粉の飛散シーズン前に、14人に新しいワクチン、残りの11人にプラセボ(偽薬)をそれぞれ1週間おきに計6回注射した後、鼻水、くしゃみ、涙目などの症状について詳細に追跡した。この結果、ワクチン群では花粉シーズン中のアレルギー症状に60%の減少がみられ、さらに翌年、ワクチンの追加がなくても引き続き症状の軽減がみられた。ブタクサ以外の花粉アレルギーには効果がみられなかったことから、このワクチンの特異性の高さがわかるとCreticos氏は述べている。
次の第V相試験の結果次第では、数年後に市販できる見通しだという。このほか、ブタクサアレルギー性喘息患者向けのワクチンについても、第U相試験が計画されている。このワクチンのコンセプトは、花粉症以外に関節炎などの慢性炎症性疾患にも応用できるものだという。
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花粉症というのはアレルギー、つまり花粉に対するIgEが大量に作られることによって起こる免疫疾患です。そのためIgEを阻害してやれば花粉症は治るわけですが、今までは特異性がなく、副作用がキツかったりと散々でした。
しかしこのワクチンはどうやら特異性が高いらしい。つまりはブタクサに対する抗体だけをうまいことシャットアウトすることができるようです。実現すれば多くの人が救われるでしょう。グッバイティッシュライフ。
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