2012年01月08日

百万人に1人の副作用ポリオ生ワクチンvs安全だが未承認の不活化ワクチン

ポリオワクチン、生と不活化どう考える?

 厚労省の調査でも、不活化ワクチンを個人輸入する医療機関でのワクチン接種が、年明けごろから急増したことが分かっている。日本小児科学会と日本小児科医会の会員計3870人から回答を得た調査結果によると、今年7月に初回接種を受けたのは4048人で、10年12月(356人)の約11倍に上った。

 生ワクチンは、予防接種法に位置付けられており、国の定期接種に使用される。接種費用は公費負担で、接種後に健康被害が生じた場合、救済制度の対象になる。一方、不活化ワクチンは、予防接種法に位置付けられていないばかりか、薬事承認さえされていない。個人輸入している医療機関で接種を受けられるが、4回の接種に計2万円ほど必要になる上、健康被害が生じたとしても補償は受けられない。

 厚労省は、生ワクチンの接種を受けるべきとのスタンスだ。早くても12年度の終わりごろとなる不活化ワクチンの導入まで接種を待つことは「お勧めできない」として、生ワクチンの接種を保護者に呼び掛けるよう、10月4日付で各都道府県に通知している。

 同省の「不活化ポリオワクチンの円滑な導入に関する検討会」で座長を務める国立感染症研究所感染症情報センターの岡部信彦センター長は、「何もやらないのが一番危ない」と、生ワクチンか不活化ワクチンのどちらにしろ、接種を受けるよう呼び掛けている。背景にあるのは、中国・北京でのポリオウイルス感染例の発生。「近場のものとして警戒しなければならない。感染症は、一例でもあればそこから広がる可能性がある。国内でワクチン接種率が低下し、免疫を持たない人が増えれば増えるほど、その可能性は高くなる」と警鐘を鳴らす。

 では、生ワクチンと不活化ワクチン、どちらを接種すればよいのか―。岡部氏は、「100万人に一人、1年に一人という頻度とはいえ、それが生ワクチンによるまひであることが明らかなら、やめた方がいいのは当然」と、不活化ワクチンへの切り替えの必要性を強調するが、現時点では生ワクチンの接種を受ける方が望ましいと考えている。孫にも生ワクチンの接種を勧めたという。

 生ワクチンは、現場で使い慣れていて、リスクのレベルが分かっており、100万分の1というまひのリスクを承知して使えるからだ。一方、不活化ワクチンは高価で、現場で使用経験が少なく、日本におけるリスクのレベルが分からない。不活化ワクチンについて岡部氏は、「世界で広く使われている、恐らく安全なワクチンだが、まひ以外のリスクが分からない。健康被害が起きた場合の補償もない」と指摘する。

 一方、不活化ワクチンを個人輸入し、過去2年間で1700人以上に接種したという久住氏は、不活化ワクチンを緊急輸入すべきだと強調する。生ワクチンと違い、不活化ワクチンならまひの心配はない。生ワクチンでまひになる確率は「交通事故の確率よりずっと低い」ものの、不活化ワクチンの方が望ましいというのが久住氏の考えだ。

 しかし、厚労省は不活化ワクチンの緊急輸入に消極的だ。では、生ワクチンの接種を受けるのと、「早くても12年度の終わりごろ」となる不活化ワクチンの導入まで待つのと、どちらがよいのか―。

 久住氏も、ワクチン接種率の低下による感染拡大を懸念し、接種を待つという選択には否定的だ。しかし、生ワクチンの接種には慎重な考えで、「もう国に頼ってはいられないので、自治体や個別の医者たちが不活化ワクチンを個人輸入して、どんどん接種を勧めてあげればいい」と話す。

 また厚労省は、未承認の不活化ワクチンを接種して健康被害が起きた場合に、救済制度がないことを問題視している。だが、久住氏はあまり心配はないと考えている。不活化ワクチンでも、アナフィラキシーなどまひ以外の副反応が出る可能性はあるが、米国のワクチン副作用被害補償制度(VICP)での補償件数を見ると、日本で接種した場合に想定される、因果関係を否定できない重篤な副反応の発生頻度は3、4年に一人くらい。「生ワクチンによりまひになる可能性よりずっと低い」という。



 この問題は、厚生労働省が不活化ワクチンを早急に承認すればすむ問題なんですけれども、日本というのはどうにもこうにも新薬に対してはなかなか承認されない傾向にありますので。まぁ早く承認すればいいってもんでもないですけどね、不活化ワクチンで何か障害が出たら、結局不活化ワクチンを推奨していた親も医者も「国の責任!」と叫ぶのでしょうし。

 でも危険性が不活化ワクチンのほうが低い以上、できれば、ちゃんと国の基準をとおった安全な不活化ワクチンを使ってほしいですけどね。今の個人輸入というリスクを見逃しているほうが問題だと思いますし。
広告
posted by さじ at 04:59 | Comment(2) | 小児
この記事へのコメント
不活化ワクチンが開発間もない「新ワクチン」なら厚労省の言い分にも、岡部氏の言い分にも一理あるといえるかもしれない。でも、現在使われているeIPVの実用化が1983年であること、世界であらゆる人種に対して年間2500万人に接種が行われ、副反応データも膨大に検証されていることを考えれば、逆に今、何を国が「検証」しようとしているのかその内容が問われると思います。

それが、科学としての医学のあり方であると。
Posted by ママサン at 2012年01月08日 12:16
不活化ワクチンが開発間もない「新ワクチン」なら厚労省の言い分にも、岡部氏の言い分にも一理あるといえるかもしれない。でも、現在使われているeIPVの実用化が1983年であること、世界であらゆる人種に対して年間2500万人に接種が行われ、副反応データも膨大に検証されていることを考えれば、逆に今、何を国が「検証」しようとしているのかその内容が問われると思います。

それが、科学としての医学のあり方であり、集団防御のための国の予防施主行政のあり方であると。
Posted by ママサン at 2012年01月08日 12:16
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。