身体の老化した細胞(body's old cells)を除去することにより、加齢による疾患の発症を遅らせ、老齢期を
元気に過ごせることがマウスの研究で示され、英科学誌「Nature(ネイチャー)」オンライン版に11月2日掲載
された。研究著者である米メイヨー・クリニック(ミネソタ州ロチェスター)教授のJan van Deursen氏によると、
研究グループは、いわゆる“老化(senescent)細胞”(正常に機能しなくなっても体内に留まり、健康な組織を
損傷する細胞)を特定し、除去する方法を突き止めたという。
van Deursen氏によると、老化の機序には多数の説があるが、そのひとつとして、加齢とともに老化細胞が
蓄積し始め、周囲の正常な細胞の機能を低下させる老化蛋白(たんぱく)やその他の因子を産生するという
ものがある。老化を早めるよう遺伝子操作したマウスの老化細胞を除去すると、残った組織の健康状態が向上し、
性能が改善されることが判明した。
老化細胞の数は、ヒトの高齢者で最大15%を占める。研究グループは、マウスの老化細胞を除去するため、
p16と呼ばれる蛋白の追跡子(tracer)に着目。「p16は細胞の老化をもたらす一連のステップの引き金
となる可能性があるとされ、若く健康な細胞には発現しないが、加齢とともに組織内に増えてくる」と研究共著者の
James Kirkland博士は説明している。このp16を用いて、老化細胞内の「自殺遺伝子
(suicide gene)」の一種を活性化させた。
老化を早めたマウス2群を用い、1群はマウスの典型的生存期間である15カ月を通して老化細胞を除去し、
もう1群については加齢による障害が十分に進行するのを待ってから、数カ月間の老化細胞除去を行った。
その結果、生涯にわたり処置したマウスには、白内障、筋肉量や筋力の低下などの加齢による問題がみられ
なかったが、高齢期に老化細胞除去を行ったマウスでも、加齢による健康問題の進行を遅らせることができたほか、
活動レベルの大幅な改善もみられた。「ヒトを対象とする研究は未だ実施されていないが、現時点では動物
モデルで老化細胞を安全に除去できることがわかった」とVan Deursen氏は述べている。
専門家らはこの知見に期待を示す一方、「健康効果を得るためには、いつ、どのくらい老化細胞を除去すれば
よいのか、また、ヒトを死亡させずにどの程度まで老化細胞を除去できるのかなどの疑問が残る」と指摘している。
別の専門家は、「老化は癌(がん)などに対する防護機構の一種であるとも考えられてきたが、今回の知見は
そうでないことを示しており、さまざまな可能性を開くものだ」と述べている。
理論的には老人に対しても効くってことかー。なんか壮大だなぁ。
でも人間みたいな大動物の老化細胞を除去、って、どうやるんでしょうかね。なんかイメージ的に、ブラックジャックの「キャンサー・ハンター」の機械を思い出しました。キャンサーハンターは、日焼けマシンみたいなのに人を入れると、全身から癌細胞を取り除いてくれる装置なのですが、副作用として眼とかに影響があるとかなんとか。この研究も臨床応用できるのかどうか。