組み換え作物の安全性論議に一石を投じたのは、ロシア科学アカデミー高次神経機能・神経生理学研究所のイリーナ・エルマコバさん。7月に市民団体「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」(東京)などの招きで来日し、各地で講演した。
エルマコバさんは昨秋、3群のラットに▽遺伝子組み換え大豆▽通常の大豆▽通常の飼料−−を与えたところ、組み換え大豆を食べた群の子ラットの約52%が死んだ、と発表した。
組み換え作物を食べた動物が大量に死んだという報告は過去になかったため、注目されたが、厚生労働省はすぐに「えさの栄養組成がはっきりしないなど実験に不備が多く、科学的な根拠に乏しい」とホームページで反論を載せた。英国食品基準庁も実験を疑問視する声明文を出した。
「そもそも審査のある科学雑誌に論文が出ていない」(唐木英明・東大名誉教授)「ラットの体重にバラツキが多過ぎ、飼い方に問題がある」(青山博昭・残留農薬研究所生殖毒性研究室長)など、専門家からも疑問の声が相次いだ。
実は、同様の実験は国内の研究機関も実施している。
東京都健康安全研究センターはラットに組み換え大豆を2年間与え、影響を調べた。えさに混ぜた組み換え大豆は、人の摂取量に換算すると1日約570〜730グラムにもなる。その結果、生存率は通常の大豆を与えたラットと差がなかった。
国立医薬品食品衛生研究所(東京)もラットとマウスで実験し、免疫への影響や発がん性などを調べたが、「悪影響は出ていない」という。
また、飼料添加物の安全性などを調べている「日本科学飼料協会」(東京都)は00〜03年、組み換え大豆やトウモロコシを肉牛、乳牛、豚、ブロイラー、採卵鶏に与える実験をした。牛の胃や血液の異常、乳量や産卵量への影響、肉や乳、卵への組み換え遺伝子の移行などを調べたが、いずれも「異常はなかった」としている。
さらに組み換え作物は養殖魚のえさにも混じっていることから、昨年、カンパチに組み換え大豆とトウモロコシを8週間与える実験を実施。魚肉に組み換え遺伝子は移行していなかったという。
ただ、安全性に関する論議が起こり、消費者に不安が生じた場合「早急に公的な検証が必要」との指摘もある。化学物質や組み換え作物などのリスクをどう伝えるかを研究する東京大学非常勤講師の西澤真理子さんは「食品安全委員会が市民と専門家を集めて議論する体制を整えれば、論点がはっきりする」と、同委員会の役割を期待している。
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常識的に考えて、遺伝子を組み替えた食品を食べたからといってラットが52%も死ぬなどという実験がインチキであるということは分かりそうなものですが。月刊ムーかよとツッコミ待ちなのかとすら思ってしまいます。
アレを思い出しますね。「買ってはいけない」という本、一時期はやりました。身近にある食品がいかにヤバいかを書いたトンデモ本です。後に「買ってはいけないは買ってはいけない」という本にて反論を食らうことになります。数字のマジックでどうしても科学的に正しいんだと思われがちになってしまいます。そこらへんに注意して、情報を取捨選択しないといけませんね。
幻影随想さんのサイトによると、「買ってはいけない」の著者(船瀬俊介・三好基晴・山中登志子・渡辺雄二)は未だに環境団体やらで活躍中のようで。人の意見に真摯に耳を傾ける姿勢がないと、とても環境団体なんてやっていけないのになぁなんて思ったりしています。
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エンガチョじゃないんですよ。