国立成育医療センター(東京都世田谷区)の宮尾益知医師は、注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)などの子どもを数多く診てきた経験を生かし、軽度発達障害について、テレビゲームを用いて学習能力や行動を改善するための研究を進めている。なかなか言うことを聞かない子どもも、テレビゲームは大好きというケースが多いからだ。同センターに宮尾医師を訪ねた。
最初に宮尾医師が紹介してくれたのは、ひらがな学習用のテレビゲーム。学習障害の一種で、知的能力や知覚能力に明らかな問題がないのに文字をきちんと書いたり読んだりできない「ディスレキシア(発達性難読症)」の子どものために開発された。
たとえば、二重液晶ディスプレーに、「あ」という立体的な文字が、縦の棒、横の棒と「の」の三層の組み合わせとして示され、「あ」と関係した絵と発音が示される。「こうやって見ると、『あ』という文字は、十字に重なる二本の棒と『の』という字から成り立っていることがわかる。ディスレキシアの子どもは平面的に書かれた文字を図形として見て、書き順が覚えられないが、空間認識能力が優れている場合が多く、こうして見せると文字を正しく理解できるようになったり、上手に書けるようになる」と宮尾医師。
このように、五十音のひらがなを任意に選び、立体的に示される文字を見聞きして、書き方や読み方を覚える単純なゲームだが、子どもたちは喜んで一生懸命にやる。「ゲームのおもしろさは、見た目の楽しさより、できなかったことができて『うれしい』と思わせることがポイント」という。
このように娯楽以外の目的のゲームを「シリアスゲーム」という。宮尾医師は新しいシリアスゲームの可能性として、「現代の子どもたちに最も欠けている社会性を養うためのゲーム、すなわち他人の気持ちを理解できるようになるゲームが作れないか」と考えている。「知的能力に問題はないのに、他人の立場や気持ちが理解できない子どもたちがいる。ゲームを使って理解しやすい形で教えれば成長できる」と言う。
現在、早稲田大学子どもメディア研究所とゲーム会社「バンダイナムコゲームス」などと協力しながら、市販の娯楽用ゲームについて、それが軽度発達障害児にどのような影響を与えるかも調べている。その結果、テレビゲームがこのような子どもたちに与える影響について、感情を抑えることや日常生活のルールを学んだり、コミュニケーションを改善する可能性もあることがわかった。ゲーム中に出てくる言葉や文字を自然に覚えてしまう子どもも多く、学習支援にも応用できそうだという。
■『悪者と決めつけないで』
「ゲームを安易に悪者だと決めつける必要はない。来院する子どもの親が『ゲームばかりしていて心配』と訴えるが、『そんなにゲームが好きなの?』と子どもたちに聞くと、『別に』という。ゲームに逃げ込むしかない家庭環境に問題があることも少なくない」
宮尾医師は「父親が仕事から帰ってきて、ビールを飲みながらテレビで野球やサッカーを見ているのと同じ。子どもがゲームをするのは、緊張の糸をほぐす側面があるのを忘れてはいけません。これは障害のない子どもたちにもいえると思う。ただ、身体的に悪影響を及ぼすほどゲームを行えばよくない。ほどほどにすることが大切」と話している。
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そもそもゲームが良くないってのも意味不明ですよね。ゲームに「逃げる」しかないその家庭環境が良くないのであって、ゲームそのものは別に悪くないだろうと。まあ親としては、自分たちに問題があるのではなくてゲームに問題があるんだと責任転嫁したくなる気持ちもわかりますけどー。
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<メモ>軽度発達障害
注意散漫や行動に落ち着きのないADHD、こだわりが強くコミュニケーションが苦手なアスペルガー症候群、読み書き計算などが困難なLDなどがある。文部科学省の調査では、6.3%もの児童・生徒に軽度発達障害児特有の困難さが見られる。大人になるにつれ障害を克服するケースも多いが、他人とのコミュニケーションがうまくとれず、イジメられたり、不登校になることもある。