破裂すれば命にかかわる腹部大動脈瘤を、米国製の人工血管「ステントグラフト(SG)」(直径20〜32ミリ、長さ約20センチ)で血管の内側から治療する専門医の研修が、橿原市の県立医科大学付属病院などで開かれた。24日、吉川公彦教授(放射線科)の指導で、74歳の男性患者に対し、SGの留置術が行われた。
米国製SGは、吉川教授らの研究グループが4施設で97例の臨床治験に取り組んだ結果、厚労省が医療機器として先月認可したばかり。画像診断の発達で、外科手術が困難な高齢者に未破裂の大動脈瘤が見つかるケースが増えており、米国製SGの安定供給開始は、患者にとって朗報となりそうだ。
SGは、細いステンレス線の網をポリエステルで覆った人工血管。治療は、両足の付け根を約2センチ切開して、動脈にカテーテルを差し込み、エックス線で確認しながら患部に折り畳んだSGを押し出す。SGが血管内で広がり、こぶに血液が流れるのをふさいで、動脈の破裂を防ぐ仕組み。局部麻酔で手術時間は約3時間、開腹しないので傷跡が小さく入院期間が短いのが特徴。
SG留置術は、米国で90年に開発され、欧米では広く行われている治療法。日本では医師がSGを手作りしたり、個人輸入で治療にあたってきたが、対応できる数が限られていた。
吉川教授は「日本でもようやく医療機器として正式に認可され、今後指導者として活躍される先生方が2日間のトレーニングコースに参加してくれた。多くの患者様に提供できるようになり、外科手術に代わる治療法として普及する」と話している。
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腹部大動脈瘤は、ほとんどが腎動脈起始部より末梢側で起こります。ステントによる治療では大腿動脈、もしくは外腸骨動脈を切開し、ステントを入れます。ステントのワイヤーは自然に拡張するようになっているので非常に便利です。
長所としては、手術による人工血管置換術に比べて侵襲性が低いこと。そのため、高齢者や出血性疾患を合併する場合にも用いられます。
短所としては、エンドリーク(Endoleak)が問題になっている点が挙げられます。Endoleakとはステント・グラフトの外側の血流の漏れで、ステントが血管壁の大きさと合っていなかったりすることで起こり、数ヶ月続くと、動脈瘤の拡大や破裂をきたします。術後エンドリーク率は、腹部大動脈瘤では5%程です。
参考:
大動脈瘤
山口大学器官制御医科学講座(第1外科) ステント・グラフト留置術
腹部大動脈瘤に対する治療戦略
関連:
医学処 腹部大動脈留の新治療は「ステント」。高齢の患者のため
医学処 大動脈瘤の手術は医者にとってもハイリスク
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