脳内ではマリフアナに似た「脳内マリフアナ」と呼ばれる物質が作られているが、この物質が小脳での運動学習能力に影響していることを大阪大の狩野方伸教授(神経生理学)らのグループが解明した。狩野さんは「運動音痴に悩む人や運動神経に優れた選手など、運動の学習能力に差が生まれる仕組みの解明につながる可能性がある」としている。米科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」に24日、掲載された。
脳の神経細胞は、シナプスと呼ばれる接続部分で、グルタミン酸などの物質を受け渡すことで情報を伝えている。狩野さんらは01年、グルタミン酸が出過ぎて情報伝達が過剰になると脳内マリフアナが神経細胞から出され、神経の過剰な興奮を抑えるブレーキ役になっていることを解明した。
今回は、脳内マリフアナの受容体であるCB1というたんぱく質が、動物の運動を制御する小脳の神経細胞に特に集中していることに着目。CB1を遺伝子操作で働かなくしたマウスで、運動機能の変化を調べた。
正常なマウスに一定の合図を聴かせた直後に目の周辺に電気ショックを与えると、1週間後には合図を聴いただけでまばたきをする割合が約7割になった。しかし、遺伝子操作のマウスでは3割以下で、実験前とほとんど変化がなかった。
遺伝子操作したマウスでは脳内マリフアナによる神経伝達の異常が小脳で起きたため、神経反射など新しい運動パターンの学習ができなくなったと考えられるという。
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小脳では運動機能の調節を行っています。ようするにCB1が少ない人は、脳内マリファナが働かなくなって、運動を制御しづらくなるということですかね。受容体の問題だとすると、脳内マリファナを増やせばいいという問題でもなさそうですが、選択的に受容体を刺激してやることができれば、もしかしたら。
参考:脳内マリファナを医療に生かす