6月に成立したがん対策基本法に基づき、厚生労働省が2007年度に実施するがん対策の全容が22日、判明した。
患者の苦痛を和らげる緩和ケアを早い段階から実施するため、医師向けマニュアルを整備するほか、先進各国に比べて極端に少ないモルヒネなど医療用麻薬の適正な使用を拡大する。都道府県の独自のがん対策に総額30億円程度の財政支援を新規に行う。厚労省は07年度予算の概算要求に、前年度比で2倍近い約300億円のがん対策費を計上する方針だ。
患者の関心が高い緩和ケアは現在、専門知識を持つ医師が少ないこともあり、治療末期に実施されることが多い。厚労省は、モルヒネの使用法などを含む、医師向け講習会やマニュアル作りを通じて、早い段階から緩和ケアを受けられるようにする。自宅で緩和ケアを希望する患者の相談相手となる「在宅緩和ケア支援センター」も新設する。
また、がん治療は入院して受ける例が多いが、経済的な理由などから通院による抗がん剤治療を希望する患者向けとして、国立がんセンター東病院(千葉県柏市)に専門の「通院治療部」(仮称)を新設する。
がん医療水準向上のための指導チームの派遣など、地域の特性を踏まえ、先駆的な事業を行う都道府県を支援する制度も創設する。
施設整備では、医療水準の地域格差の解消に向け、治療の中核となる「がん診療連携拠点病院」を現在の135から358に増やすため、07年度予算で約95億円を要求する。放射線診断装置など高性能機器の整備のため、緊急の財政支援を実施する。がん細胞の有無などを判断する病理医が足りない病院には、遠隔画像診断装置を整備し、他の病院による支援体制をとる。
国立がんセンター(東京・築地)には、「がん対策情報センター」(仮称)を設置し、最新のがん医療情報を収集・提供するほか、国内のがん罹患率や再発のデータを集める。各拠点病院などでも、データの登録制度を実施する。
がん対策基本法は、患者本人の意向を尊重した適切な医療体制の整備などを基本理念とし、国や地方自治体にがん対策の推進を義務づけている。
がんは1981年以来、日本人の死因の第1位となっている。厚労省によると、05年は32万5885人が亡くなり、第2位の心臓病の2倍近くに達している。
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日本人にとってがんは天敵ともいえる病気ですが、どうも「治るか治らないか」の議論ばかり進んでいて、「受け入れる」という選択肢が軽視されていると思うんですよね。
がんに対して適切な知識を持っていれば、完治するのは難しいという段階があると理解できるのですが、日本人の場合、そういう段階にいても治療法を模索するか、絶望するかのどちらかが多いのでは。
おそらく永いこと、エンターテイメントの場において「ガン」がドラマティックに取り上げられすぎたのが原因の1つではないかと思われますが、実際はガンは身近にあるものです。そして、治らないと分かったときに「受け入れる」ことも必要なんです。
そのための「緩和ケア」。有限な残りの人生を、自分らしく生きるためには自身が受け入れ、医師と円滑なコミュニケーションをとることで「楽」にガンと「共に生きる」ことができるわけです。
とりあえず、緩和ケアに関する情報発信が少なすぎる気がします。どうでもいいニュースより積極的に取り上げるべき事象が、ここにはあります。
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