東日本大震災の影響で、若手研修医の「被災地離れ」が懸念されている。震災の混乱で沿岸部の病院は来年度の研修医の募集活動が十分できず、被災地のマイナスイメージで応募が減ったケースもある。研修医の確保は医師が地域に定着するための大きな要因になっており、将来の医師不足につながりかねない深刻な事態。自治体や各病院は復旧状況や研修内容をアピールし、人材確保に躍起になっている。
「来年度の研修医の応募は昨年同時期の半分。震災の影響は懸念していたが、これほど少なくなるとは」。宮城県内の総合病院の担当者は危機感を募らせる。
「病院は復旧し、研修体制も通常通り整っている。しかし情報が十分に伝わらず、被災地として敬遠されてしまった面がある」とみる。
大きな被害を受けた被災地の病院では震災から1カ月以上、災害対応や交通の寸断などで医学生の病院見学を受け入れられなかった。予定していた説明会も開けなかった。
「正確な情報の発信や復興に向けた人材の必要性のアピールに力を入れないと、地域の医師不足を加速させかねない」とある病院の担当者は危惧する。
2004年度に導入された「新臨床研修制度」により、新人医師らは指定された全国の研修病院の中から研修先を自由に選択できるようになり、医師が都市部の病院に集中する傾向が加速した。
岩手、宮城、福島の被災3県をはじめ東北各県では、震災前から研修医が募集定員を大幅に下回る状況が目立ち、医師不足に拍車を掛ける大きな問題となってきた。
中でも福島県は福島第1原発事故の影響で、人材流出が深刻。福島県立医大病院は「放射線への懸念もあり、来年度の研修医の応募は低迷している。本人が希望しても、家族が反対するケースも少なくないようだ」と悩む。
8月には県内外の医学生を対象に、浜通りの病院で現地の医師の体験談を聞くなどの「災害・放射線被ばく医療研修」を実施するなど、福島の医療を支える人材の確保に懸命だ。しかし原発事故がいつ収束するか見通しが立たず、対策は長期に及びかねない。
厚生労働省の調査で、必要な数に対する実際の医師数が全国で最も少ない岩手県も危機感は強い。県は本年度、県内の研修病院を見学に訪れる医学生に対し、交通費を全額支給するなどの対策を打ち出した。
来年度分の研修医の人数は最終的に、病院側の選考と学生側の希望順位を合致させる「マッチング」を経て10月末に確定する。厚労省は「被災地の研修医確保は重要な課題。マッチング結果を見た上で、対策を検討したい」(医師臨床研修推進室)と説明している。
研修医の「被災地離れ」を防ごうと、東北の病院は医学生らを対象とした実習などを企画し、復興に向けた人材の必要性を訴えている。東北大病院は8月、全国の医学生らを招いて沿岸部の研修病院を見学したり、宮城県南三陸町で訪問診療を体験したりする「被災地医療実習」を開催。計32人の参加者が被災地の医療現場の最前線を経験した。
「体温を測りますよ」。8月29日、南三陸町の仮設住宅。被災地医療実習に参加した医学生ら5人が南三陸診療所の訪問診療に同行し、90歳の女性の健康状態をチェックした。
「高齢者が多く、被災地の医療ニーズの高さを痛感する」。終了後、関西地方から参加した医学部4年の女子学生はこう感想を話した。
東北大病院は被災した東北地方で働く医師の確保につなげようと、8月1日から計4回、全国の医学生を対象とした3日間の実習を企画した。被災地の医療現場を自分の目で見てもらい、医療の必要性を感じてもらうことが狙いだ。往復の交通費は全額、東北大病院が負担した。参加者らは南三陸診療所のほか石巻赤十字病院、東北大病院を訪問し、実習を通じて一線で働く医師らと交流した。
参加者の大半は首都圏などの出身者だったが、終了後のアンケートで回答者31人中5人が「被災地で働いてもよい」と回答。25人が「条件が合えば働きたい」と答えた。
企画を担当した東北大病院卒後研修センター助教の田畑雅央医師は「被災地にまず来てもらい、被災しながら頑張っている医師や患者に直接接することで何ができるか考えるようになる。何もしなければ医師は減っていくだけだ」と強調。「参加者には東北の情報を発信し続け、宮城や東北で働くことを意識してもらいたい」としている。
まぁ分からんでもないですけどねぇ。安易に考えちゃったら、まともな研修は出来ない、と思ってしまいがち。
ですけど、医療の普及は最優先で行われてきたはずですし、相当回復していると思うんですよね。というのが一点と
初期研修の2年間を、被災地の医療として、医者的経験値にしてしまう絶好の機会なのでは。というのがあるんですよねぇ。総合診療医を目指す人だったら普通以上に経験になるのでは。そこらへんを分かっていて首都圏から行く人は結構いそうですね。