国立がん研究センター(嘉山孝正理事長)は8月31日、日本発の抗がん剤の開発を 目指し、早期臨床試験の拠点「フェーズ1センター」を整備すると発表した。 新薬を世界で初めて人に投与する「ファースト・イン・ヒューマン試験(FIH試験)」 を含め、世界でもトップレベルのフェーズ1試験が実施できる体制を整え、 ドラッグ・ラグを解消する。
フェーズ1センターには、診療科横断の「フェーズ1チーム」を新設。 専任の医師や治験コーディネーター(CRC)、担当の看護師らを雇用する。また、 フェーズ1試験の実施に伴って必要な前臨床試験や橋渡し研究(トランスレーシ ョナルリサーチ、TR)の体制も強化するため、支援研究員を確保。FIH試験後に 行われる未承認薬の医師主導治験(POC試験など)についても、データマネジャーなどの人材を増強する。 現時点で、前臨床段階を含めて5つの医師主導治験を計画しており、ほかにも FIHの企業治験を行う予定。国立がん研究センターで行っているFIH試験は現在、 年2件ほどだが、5年間で10件程度に増やしたいとしている。
FIH試験をはじめとするフェーズ1試験については、国内の実施体制が整っておらず、 日本の製薬企業には不利な状況で、国内での治験着手の遅れは、ドラッグ・ラグの 主因にもなっている。抗がん剤分野でFIH試験が可能な施設は、欧米を中心とする 約20施設で、フェーズ1センターをアジアの中心施設として位置付けたい考えだ。
厚生労働省の「早期・探索的臨床試験拠点整備事業」として今年度から5年間、 フェーズ1センター整備に年間5億円、治験実施に年間1億5000万円の助成を受ける。
嘉山理事長は、「センター整備の一番の意義は、ドラッグ・ラグの解消。 これまでは製薬企業が治験に参入する条件が悪すぎたが、センターが整備されれば、 どんどん参入できるようになるだろう」と強調。フェーズ1センター長に就く大津 敦・国立がん研究センター東病院臨床開発センター長は、「国内に限らず、海外の 企業にも『このセンターでFIH試験をやりたい』と思わせるような体制を整えたい。 フェーズ1の主導権を取れば、フェーズ2、3の試験も日本がリードでき、最先端の 薬に対する日本の患者さんのアクセスが良くなる」と期待を込めた。
とうとう日本も本腰を入れて新薬の臨床応用に臨む構えですね。
今まではどうしても(薬の開発上)他国におされてましたが、臨床試験さえきちんと行うことができれば、日本の優秀な製薬会社が何とかしてくれるはず。