骨がもろくなる骨粗鬆症の多くのケースは、高血圧を招くのと同じ体内ホルモン物質「アンジオテンシンII」が原因になっていることを、大阪大大学院医学系研究科の森下竜一教授(臨床遺伝子治療学、加齢医学)らのチームが解明した。ラットを使った実験で、同ホルモンを抑える血圧の降圧薬が骨粗鬆症に効くことも証明されたといい、画期的な治療法になりそうだ。
骨粗鬆症の患者は推定で国内約1000万人。特に、ホルモンバランスが変わる更年期以降の女性が患者となる「閉経後骨粗鬆症」が多い。この病気では高血圧を伴う人が目立つことも知られているが、原因は分かっていなかった。
森下教授らは、こうした典型的な患者と同じ状況をつくるため、メスのラットから卵巣を摘出して実験。まずアンジオテンシンIIを投与したところ、高血圧になっただけでなく、閉経後骨粗鬆症の患者と同様、骨組織を破壊する「破骨細胞」が増殖・活性化し、骨の密度が低くなることが確認された。
この結果を受け、今度は、もともと高血圧のラットを選んで卵巣を摘出。何もしないラットは骨の密度が30%程度低くなったのに対し、アンジオテンシンIIを抑える受容体拮抗薬「オルメサルタン」を投与したラットの場合、破骨細胞の増殖と活性化が止まり、骨の密度も低くならなかったという。
森下教授によると、閉経後骨粗鬆症の患者は、骨をつくる「骨芽細胞」は健全な場合がほとんど。アンジオテンシンIIを抑えて破骨細胞の増殖と活性化を弱めれば、一度減った骨の密度を元の状態に近づけることは可能。降圧薬であるアンジオテンシンII受容体拮抗薬オルメサルタンが、新しい治療薬になる可能性は高いという。
骨芽細胞が減少する「老人性骨粗鬆症」や男性の骨粗鬆症でも、アンジオテンシンIIが影響している可能性もあり、今後も研究を続ける。
森下教授は「高血圧で骨粗鬆症という人はかなりの人数で、1つの薬で両方の治療になるケースは多い。オルメサルタンは副作用も少ないので有効な治療法になる」と話している。
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ほー。アンギオテンシンIIは、レニン-アンギオテンシン系といわれる経路によって分泌されるホルモンで、血管平滑筋細胞の受容体に結合して収縮を起こし、血圧を上昇させます。
今回のニュースで、アンギオテンシンIIには破骨細胞を活性化する作用があるということが判明しました。骨粗鬆症の治療薬としてはビスホスホネートなどの副作用の強いものがありましたが、それらにとってかわる新しい治療法として確立されるかもしれません。