心的外傷後ストレス障害(PTSD)と同様の症状を示すラットが、恐怖の記憶を別の記憶で上書きできないために症状を起こすことが、広島大医歯薬学総合研究科グループの研究でわかった。薬物で上書き機能を回復させて症状を改善させることにも成功。同グループでは、この薬の臨床試験を行い、治療薬の開発に結びつけたいとしている。
森信繁・助教授らは、恐怖におびえる行動や体内物質の分泌異常、痛覚異常などPTSDと同様の症状を示すラットで実験した。ラットは部屋に3分間入れて電気ショックを与えると、数日間は部屋に入れるだけで、ほとんど動かなくなるという恐怖症状が表れる。
ショックを与えた直後から、場所や状況などの記憶にかかわる脳の海馬という領域の遺伝子の働きを調べたところ、恐怖体験後は記憶をつくるスイッチになるたんぱく質の機能が低下していた。一方、このスイッチに結びついてその働きを活性化する薬物を飲ませてやると、部屋で動き回るようになった。
研究グループは、場所や状況にかかわる恐怖の記憶が、新たな記憶の形成が弱くなることで塗り替えられないことがPTSDの原因としている。記憶形成を改善する薬物は統合失調症の治療薬として米国などで臨床試験を行っている。
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とうとう記憶までも薬でどうにかなってしまうのか。PTSDで苦しんでいる人はかなりおられると思うので、臨床試験の成功を願います。が、なんとなく悪用されそうな薬でもありますね。