少し前に学習した事実や出来事を思い出す「陳述記憶(言葉で表現できる記憶)」に睡眠が不可欠であることが、米ハーバード大学(マサチューセッツ州)医学部睡眠認知センターJeffrey M. Ellenbogen博士らの研究によって明らかにされた。「how to記憶」とも呼ばれる「非陳述記憶(言葉で表現できない記憶)」に睡眠が有効であることは過去に示されていたが、陳述記憶に睡眠が及ぼす影響についてはこれまでわかっていなかった。この報告は、生物学誌「Current Biology」7月11日号に掲載された。
Ellenbogen氏らは、処方薬を使用しておらず、睡眠障害も睡眠パターンの異常もない被験者60人を対象に研究を実施。このうち48人は、テスト前に睡眠を取るか取らないか、さらに記憶妨害を与えられるかどうかで、4群に分けられた。48人全員が2語1組の単語を20組暗記し、12時間後にヒントを元に思い出すというテストを受けた。記憶妨害群は、テスト直前に記憶の再生を妨げるよう、別の単語を20組学習した。残りの12人については、同様に4群に分けられ、24時間の長時間のプログラムを実施した。
この結果、妨害のない群では、睡眠を取った群の方が記憶力の平均がやや高く、妨害群では睡眠を取った群の記憶力が有意に高かった。
睡眠は消極的にではなく、積極的に記憶の強化に利益をもたらしているとEllenbogen氏はいう。脳は活発に記憶を定着させており、翌日になるとこれが強化される。この効果は予想以上のものだったという。「睡眠は不活性状態であるというのは古い考え。記憶の強化をはじめ、脳は睡眠中にもさまざまなことをしている。記憶力を最大限にするためには定期的に睡眠を取ることが必要」と同氏は述べている。
米イースタンバージニア医科大学(バージニア州)睡眠医学部助教授Robert D. Vorona博士によると「睡眠の主要な効果は専門家にも未だわかっていない」という。しかし、睡眠が不十分だと気分も能力も低下することが知られており、複数の研究により効率的な記憶の獲得に睡眠が重要な役割を果たすことが示されている。子どもの成績を上げるには、しっかり勉強するのと同時に十分な睡眠を取るよう親は指導すべきとVorona氏は述べている。
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記憶を効率よく定着させるには、寝る前に一度しっかりやり、熟睡する、そして朝もう一度確認してみる、といった形でしょうか。かなり覚えられます。前日徹夜して試験に臨むよりも沢山寝て成績の良い人はそういう勉強法を自然と行っているのではないでしょうか。
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