23日に那覇市の自治会館で開かれた第37回県獣医学会(主催・県獣医師会)で、家畜衛生試験場の又吉正直主任研究員(獣医学博士)が、県内で初めて犬ブルセラ症が確認されたことを発表した。2005年10月から06年1月にかけて、少なくともプードル、パピヨン、ヨーキー、チワワの八頭の犬ブルセラ症が確認されている。外国では殺処分される事例も多いという。又吉主任研究員は「人への感染で重症になった例はなく、神経質になることはないが、獣医師にも疾病を念頭に置いて検査してほしい」と訴えた。
犬ブルセラ症は、細菌性の人獣共通の感染症。1962年にアメリカで初めて確認されて以来、南米やヨーロッパなど世界各地で確認されている。国内では、1972年と03年に静岡県で発生した。県内では中部の犬繁殖施設で、今回初めて確認された。
流産した犬から娩出された胎児で薬剤感受性検査や抗体検査なども実施され、又吉主任研究員のほかに、県家畜衛生試験所の屋富祖昇さん、高木和香子さん、くどう動物病院の工藤俊一さんも調査に携わった。
犬ブルセラ症の症状としては、妊娠45日から50日での流産や不妊、睾丸炎などがある。交配のほかに尿やペット同士で鼻をこすり合っても感染するという。県内で犬ブルセラ症が確認された犬は現在、治療が順調に進んでいるというが、又吉主任研究員によると「諸外国の例から言っても犬ブルセラ症に100%効果のある治療法がない。治療でよくなるが、場合によっては再発する可能性があるため、感染が見つかった場合、殺処分をすることが多い」と話した。
今回確認された犬ブルセラ症の感染の原因については、菌の汚染を受けた県外の雄犬からの交配による可能性が考えられると推測されている。又吉主任研究員は「インターネットで犬を他府県から気軽に買える時代になった」と話し「一回の流産でも症状が出たら動物病院で検査してほしい」と注意を呼び掛けた。
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ブルセラというと十数年前に流行ったアレを思い浮かべる人がいるかもしれませんが、ここでいうブルセラとは、菌の属称です。注目すべき点は、犬から人に感染するというところでしょう。
人への感染経路としては接触、もしくはその菌を飛沫で体内に取り込んでしまった場合など。ブルセラ属菌は、あらゆる臓器に感染を起こし、その症状に特異的なものはなく、発熱、発汗、疲労、体重減少、うつ状態などの症状がみられます。典型的な場合、発熱の経過が特徴的で波状熱を呈し、身体所見では、発熱(数週間〜数か月続くことがある)、リンパ節腫脹、肝脾腫大がみられます。
犬を飼っている方、ブルセラ症にご注意を。
ブルセラ症の臓器別症状の特徴
○骨・関節系:腸骨座骨関節炎、膝及び肘関節炎、椎間板炎、骨髄炎、滑液包炎
○消化器系:悪心、嘔吐、体重減少など
○呼吸器系:極めてまれに咳、労作呼吸困難がみられる。
○泌尿器系:精巣炎など
○神経系 :うつ状態、髄膜炎など、頻度は2%程度
○心血管系:心内膜炎など、頻度は2%程度
参考:ブルセラ症