デントニンと呼ばれる蛋白で、虫歯になった歯の構成成分の再生を促すことにより、歯根管治療を回避できるようになる可能性が、オーストラリア、ブリズベンで開催された第84回国際歯科研究学会総会で発表された。
デントニンは合成蛋白で、歯の外側のエナメル質と中心部の歯髄に挟まれた象牙質という骨に似た硬い組織の再建を助けるように設計されたもの。虫歯になると、エナメル質と象牙質をドリルで削る治療が行われるが、そのため神経が露出し、これが熱いものや冷たいものへの過敏症の原因となり、歯根管治療や、最終的にはインプラントが必要になることもある。
今回の研究は、米Acologixアコロジクス社(カリフォルニア州)、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)および米コネチカット大学の研究グループにより、第3大臼歯を2本以上抜歯する予定の患者35人を対象に実施された。抜歯予定の歯の何本かにデントニンを投与し、残りの歯にはプラセボ(偽薬)物質を投与。抜歯後の歯を分析した結果、象牙質の新たな形成を促すデントニンによる効果がみられたという。アコロジクス社の研究開発副部長David Rosen博士によると、デントニンで歯髄細胞が刺激され、象牙質が生成されたことがうかがわれた。
Rosen氏によると、デントニンは神経が露出する恐れがあるような深い虫歯に最も効果があるという。しかし、有効性を裏付けるにはさらに大規模な第V相(フェーズ3)試験を実施する必要がある。今回の研究では、デントニンにより歯根管治療を避けることができるかどうかは不明だが、少なくとも歯の過敏症を予防できることは期待されるという。
この知見は、まだ予備段階のもので商品化されるまでには数年かかると思われるが、米国歯科医師会(ADA)のDan Meyer博士は、健康的に象牙質を再生させる方法としてデントニンは有望であるとし、「道のりは長いが、うまくいけば非常に優れた製品になるだろう」と述べている。なお、Meyer博士によれば、ほかにも虫歯によって損なわれた歯の再生を目的とする製品があるとのこと。
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おっ、これは期待できそうです。無痛の歯科治療に多大なる貢献をしそうな予感。