ジメジメした梅雨、ジリジリと焼けるような夏は、本人も気づかぬうちに、汗をかいて脱水症状に陥りやすい季節だ。しっかり水分補給しないと心臓病や脳卒中の魔の手がしのびよる。命を落とすことのないよう、予防策をまとめた。
東京都の男性Aさん(67)は1996年6月中旬、仕事仲間3人と一緒に千葉県でゴルフを楽しんだ。当日は蒸し暑く、3時間ほどコースを歩くと、びっしょりと汗をかいた。
ゴルフを終えてクラブハウスに戻り、風呂に入った後、ビールを飲んでいたら、右手に握っていたコップをポロリと落とした。右半身全体に力が入らなくなり、崩れ落ちるようにイスから転げ落ち、意識を失った。
ゴルフ場近くの病院に救急車で運ばれた。原因は、脳卒中の一種で、脳の血管が詰まる脳梗塞。一命は取り留めたものの、右足は不自由になり、つえがないと歩けなくなった。
こまめに水分補給 1日1.5〜2リットル
慶応大内科助手の市原淳弘さんは「血液中の水分が不足すると、血液の塊ができやすくなるので、脳梗塞のほか、心臓の筋肉に酸素などを送る冠動脈が詰まる心筋梗塞を引き起こす危険性が高まる」と指摘する。
Aさんはゴルフに熱中して水分補給が不十分で、入浴や飲酒により脱水症状に拍車がかかった。発病後は、お茶のペットボトルを常に持ち歩くようにしている。
また、夏場は汗とともに塩分が体外に排出されるので、塩辛い料理を食べがちになる。市原さんは「適量の塩分摂取は大切だが、とり過ぎると高血圧が進む。塩辛い食事に慣れないように、日ごろから注意してもらいたい」と話す。
高血圧のほか、糖尿病、高脂血症、肥満、喫煙、ストレス、運動不足なども、心臓病や脳卒中の「引き金」となる。生活習慣を見直すとともに、今すぐ実行できる心臓病・脳卒中の予防策(表)をまとめた。ぜひ参考にしてほしい。
死亡率高いのは 東北/独身
厚生労働省が、2004年に心臓病と脳卒中で亡くなった人の死亡率などを調査した。その結果(グラフ)を見てみると――。
都道府県別の死亡率は、青森や岩手など東北地方で高かった。その背景には、〈1〉高血圧を促進させる塩分の多い食事を好んで食べる人が多い〈2〉寒冷な気候は血管を収縮させ、心筋梗塞などを引き起こす――などの要因がありそうだ。
一方、2000年の人口動態統計を基に調査した結果では、「配偶者がいる」人は男女とも、「未婚」「離別」「死別」の人よりも、死亡率が低かった。心臓病だけでなく、脳卒中にも同様の傾向がある。
配偶者がいる人は、バランスのとれた食事など規則正しい生活習慣を送り、精神的に安定していることが多いので発病しにくいのではないか、との指摘もある。
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要するに脱水症状になるメカニズムを理解し、予防すれば起こらないんです。熱中症でも同様の予防法ですので、セットで覚えてしまいましょう。水分をこまめにとることが重要です。あと、記事中にあるようなリスクファクターも大切なので、自分が当てはまっていると思ったら、より注意して日常を過ごしてみてください。脳卒中を予防するには自覚することが一番大切です。
■心臓病・脳卒中の予防策
●脱水症状
血液が“ドロドロ”になって血液の塊ができやすくなるので、こまめに水を飲もう。個人差もあるが、1日計1.5〜2リットルほどの補給を。
●睡眠不足
血管を収縮させるホルモンが分泌されて血圧を上げ、心筋梗塞などを引き起こす。1日に6〜7時間ほどの睡眠をとろう。過労やストレスも、このホルモンの分泌を促すので要注意。
●排便
便を出そうと気張ると血圧を急激に上昇させる。便秘にならないように、食物繊維が多い食事をとるように気をつけよう。
●運動
暑いからと言って家にこもってばかりいると、肥満などを招く。1日最低30分の散歩など運動をしよう。でも、水分補給を忘れないで。
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