発汗により、ニキビが増えてくるといわれる5月。だが、放置して悪化すると赤く盛り上がったり、皮膚に凹凸の跡を残し、悩みの原因にもなる。現在、皮膚科にはニキビの初期症状から対応できる治療薬が存在するようになったことから、医師らは治療の有用性を呼びかけている。あす21日は「ニキビの日」。
ニキビは医学的に「尋常性ざ瘡」という慢性の皮膚疾患。原因は皮脂分泌の増加のほか、毛穴の詰まり、皮膚の毛包内に生息する微生物・アクネ菌の増殖(面ぽう)−が挙げられる。
「これまで日本では、患者さんも皮膚科医もニキビは疾患という意識が低かった。理由の一つは、日本に治療薬が少なかったこと。ただ、2008年に国内で新薬が承認されて以降、ニキビ治療が劇的に変わった」と話すのは、東京女子医科大学病院皮膚科の川島眞教授。
新薬とは、「アダパレン」という成分の塗り薬。毛穴の詰まりを取り除き、ニキビを減少させる作用がある。
「これまで日本では、赤いニキビを改善する治療法として抗生物質を飲んだり塗ったりしていた。新薬では初期段階から治療できる。そのため、いまニキビ治療は元から絶とうという治療法へと転換した」と川島教授は強調する。
日本にニキビ薬が少なかった理由は、承認に時間がかかることに加え、欧米に比べて重症例が少ないからだという。
ただ、ニキビは悪化すると将来的に跡を残すほか、患者のQOL(Quality of Life=生活の質)に影響を及ぼす。事実、川島教授が皮膚科を受診したニキビの患者210人を調査したところ、軽い症状でもQOLが阻害されていることがわかった。
「普通、患者は症状が重症なほどQOLが低下するが、ニキビは軽い症状でもQOLが低下している。特に、人に会いたくないといった感情に与える影響が予想以上に大きかったため、医師は患者の心理面まで配慮する必要がある」(川島教授)
アダパレンを成分に含む「ディフェリン」の国内販売元、塩野義製薬によると、2010年度の売り上げは前年度比45・5%増の32億円と急伸している。ニキビを疾患ととらえる意識と、医療機関における新たな治療薬の存在が、今後のニキビ治療の充実を図りそうだ。
一方、市販薬で売り上げを伸ばしているのが、レキットベンキーザー・ジャパン(東京都港区)の「クレアラシル」。こちらは、毛穴の内側の角質層を柔らかくする作用がある。
1960年から国内販売が始まった「クレアラシル」は、現在「クレアラシル薬用洗顔フォーム10x」など医薬部外品9品、「クレアラシル治療薬クリーム」など第2類医薬品4品に拡大。2010年の売上個数は、前年比8・1%増という。
そのほか、肌ケア商品「プロアクティブ」なども利用者を増やしている。
参考にしてみては
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塩野義製薬、肌の色素沈着を緩和するビタミン剤を発売
ナショナルが、毛穴に詰まった皮脂を取り除く吸引機を発売
大人にきびの治療薬をライオンが開発