2011年05月18日

死亡した宮崎の生徒は、劇症型髄膜炎菌性髄膜炎だった。

髄膜炎菌性髄膜炎

 宮崎県は17日、同県小林市の私立小林西高校で、男子寮で生活していた野球部の1年生4人が体調不良を訴えて入院し、1人が死亡、この生徒の血液から髄膜炎菌の抗原を検出したと発表した。

 入院中の1人からは髄膜炎菌が検出され、県は集団感染の疑いがあるとみて、同じ寮の野球部、柔道部員の検査を始めた。

 県感染症対策室によると、死亡した生徒(15)は12日に体調不良を訴え、部活動を休んだ。13日午前7時頃、食堂で倒れているのが見つかり、同市立病院に搬送されたが、同日夕、転院先の宮崎市内の病院で死亡した。

 髄膜炎は、脳や脊髄を包む髄膜に細菌が入るなどして起き、頭痛、発熱、嘔吐などの症状が出る。せきやくしゃみから感染し、国内の年間患者数は10人程度。症状が急変していることから、県は劇症型の髄膜炎菌性髄膜炎とみている。早ければ19日にも髄膜炎菌かどうか判明するという。

 死亡した生徒と相部屋の生徒、隣室の2人も入院し、1人から髄膜炎菌が検出されたが、いずれも回復し、1人はすでに退院した。



宮崎・高校生死亡 原因が疑われる髄膜炎菌性髄膜炎について専門家の解説です。

 宮崎県の私立小林西高校で、男子寮に入寮している野球部の4人が体調不良を訴え入院し、このうち1人が死亡しました。宮崎県は、感染症の1つである、「髄膜炎菌性髄膜炎」の疑いがあるとみて調べています。この髄膜炎菌性髄膜炎について、細菌学の専門家、新渡戸文化短期大学学長の中原英臣医学博士に聞きました。

 髄膜というのは、脳や脊髄を覆っている膜なんです。そこに髄膜炎菌という細菌が感染して、病気が発症したと。髄膜炎菌に感染したからといって、全員が髄膜炎になるわけではない。高熱、激しい頭痛、それからおう吐、こういう症状が最初に出ます。日本の国は、1から5までランクをつけて、1類から5類という分類をしてるんですけれども、1類が一番怖い病気と思ってください。その中で5類ですから、そういうところにランクされている病気だと思っていただいていいと思います。予防法は基本的に手を洗ったり、うがいをするというのが基本じゃないかと思います。



 髄膜炎菌性髄膜炎。珍しいですねぇ…。

 髄膜炎っていうのは、数多くある感染症の中でも、とりわけ命に関わる、急性のものです。見落としてはいけないですし、すぐに治療する必要があります。 

 発熱、項部硬直、神経学的症状がある患者はすべて髄膜炎を考慮しなければなりません。

 鑑別のためには、腰椎穿刺を行い、髄液圧、髄液蛋白、グルコース、細胞数を検査し、髄液の培養、グラム染色を行う必要があります。同時に、血液培養は常に行います。

 腰椎穿刺前に頭部CTをとるべきか?という議論がよくあります。腰椎穿刺のリスクとして、脳圧が高い場合にはやってはいけないからです。高齢でない免疫正常の患者で、神経学所見、けいれん、意識レベルの低下がなければ一般には必要とされないというデータもあります(NEJM2001)

 髄膜炎を起こすのは今回のように髄膜炎菌とは限りません。他の菌の場合もありますし、無菌性髄膜炎、要するにウイルスによるものや自己免疫性のものなど様々です。しかし髄膜炎はすぐに治療しなければならないので、経験的予測的治療が必要な場合があります。何の菌もみられず培養を待つ間は高用量の第三世代セファロスポリンとバンコマイシンを使います。(第一世代のセファメジン、第二世代のパンスポリン、セフメタゾンは髄液移行性が悪く使用してはならない)

 ちなみに、頭部、脊椎外傷や脳外科手術後はバンコマイシンとセフタジジム1回2g静注8hごとで広域スペクトルをカバーします。

 そして、培養結果や感受性のデータがわかれば抗生剤を変更します。

第三世代セファロスポリン(の中でもセフォタキシムとセフトリアキソン)

・セフォタキシム(セフォタックス)
グラム陽性菌:Streptcoccus sp.に優れている。
とくにグラム陰性菌、肺炎球菌、レンサ球菌に対して抗菌力が優れている。
Staph.aureusに対してはセファゾリン(セファメジン)に劣る
Pseudomonas aeruginosaに対する抗菌力はない。起因菌判明まではアミノグリコシドなどの薬を併用。
・起因菌不明の市中感染性敗血症に適応
・重症グラム陰性桿菌感染症に有効(急性腎盂腎炎、腹腔内感染、胆道系感染)
・重症市中肺炎に適応
・細菌性髄膜炎に適応

★髄膜炎の場合は2g静注を4〜6hごと(1日8〜12g)

副作用:発疹、重感染、C.difficile感染

・セフトリアキソン(ロセフィン)
ほとんどセフォタックスと同じ。
嫌気性菌(Bacteroides sp)に対してはセフォタキシム(セフォタックス)に劣る。
セフォタキシム(セフォタックス)の半減期が1hであるのに対して血中濃度半減期が7時間と長い。
1日1回投与で多くの感染症の治療が可能。
ロセフィン1g静注1日1回はセフォタックス3g3xに相当する。
★腎機能障害や透析患者にも、腎機能正常者と同等量で治療する

細菌性髄膜炎、敗血症性ショックではロセフィン2gを12時間ごとに静注

副作用:発疹、過敏症、下痢、胆石、C.difficile感染
★胆石症の徴候が出たら投与中止
★新生児黄疸には投与しない

・バンコマイシン

優れたグラム陽性菌に対する抗菌作用をもつ(全てにおいて)
嫌気性菌(C.difficile)にもううこう。
グラム陰性菌に対する抗菌作用はない。
血中濃度半減期6〜9hと長い

ペニシリン、セフェム系との交叉反応がないため、重症グラム陽性菌感染症においてのペニシリン、セフェムに対するアレルギーのある場合に適応となる(菌血症、心内膜炎のとき)

髄膜炎の場合:500mg〜750mgを6hごとに静注

★腎機能障害患者には血中濃度モニターを行う(最適血中濃度 trough 10〜20μg/ml。peak 25〜40μg/ml)

副作用:Red-man syndrome(上半身に発疹。ときに血圧低下。→急速静注でヒスタミン放出が起こるために生じる。1時間かけてゆっくり点滴投与で防止可能)
その他、静脈炎、聴力障害、腎障害、過敏症、白血球減少

医学処:細菌性髄膜炎で両足と右腕を切断した女性がUCLA医学部を卒業


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posted by さじ at 07:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 感染
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