2011年05月12日

消化管や膣から内視鏡で手術をする、一切皮膚を傷つけない手術法NOTES

膣、口から「NOTES」、一般化進む 手技の複雑さ、患者のニーズから慎重な声も

 「NOTESは直近の1年で爆発的に普及するようなことはないものの、今後の日本の医療を考えれば、幅広い患者に適応される技術と見るべきだろう」。大分大学第一外科教授の北野正剛氏はこう説明する。日本の腹腔鏡下手術を先進的に導入し、普及に寄与したことでよく知られる北野氏は、NOTESもこれから一般化していくと見る。

 NOTESは2004年に開始された内視鏡手術で、世界的に見ても先端の技術だ。内視鏡を膣や口、肛門などの自然孔から入れて、管腔壁を意図的に切開して体腔内に挿入し手術を行う。体表面を一切切開することなく、究極的な低侵襲手術と捉えられている。国際的なNOTESの研究会であるNOSCARによると、2010年7月までに欧州の2625例を筆頭に、世界で約3500例に実施されている。

 北野氏のグループは、国内でも先進的にNOTESに取り組む。これまでにNOTESの実施は15例で、2011年にも1例で実施している

 大分大学で実施した15例は、軟性内視鏡のみを利用した手術で「Pure NOTES」と呼ばれる。それに対して、腹腔鏡下手術と組み合わせて実施されるケースは「Hytbrid NOTES」と呼ばれる。

 北野氏は、「Pure NOTESは現状では、機器の関係で、腹腔内観察に限り行っている。今はPure NOTESに固執せずに、Hybrid NOTESも行って技術を向上させていくことが大切な時期と考えている。手技の向上や機器の進歩に伴って、適応疾患を増やしていくことになるだろう」と話す。

 今のところ中心的な適用症例は、膵臓癌の術前進行度診断。経胃で腹腔に内視鏡を挿入して膵臓の診断を行う。2011年に実施した1例を含めた13例で実施済みだ。11人では遠隔転移がなく標準的な開腹手術を実施。2例では肝臓への転移が認められ、術前迅速病理診断も実施。早期の化学療法の実施に移行した。

 そのほかの実施例は、NOTESによる胆嚢摘出術。2004年に北野氏らが初めてNOTESを実施した症例は、60代の女性に対する手術で、経膣による胆嚢摘出術を実施して術中の偶発症や術後の合併症なく成功。手術時間は165分。さらにもう1例の経膣の胆嚢摘出術でも術中偶発症、術後合併症なく成功している。手術時間は181分となった。

 北野氏がNOTESが普及していくと見る理由は、実現される利点が大きいと考えるからだ。

 そのメリットは「体表面が切開されないという整容性」の面にとどまらない。術後と疼痛の軽減があるほか、術後回復が早く、創ヘルニアや創感染といった創に対する合併症の予防も実現される。北野氏は、「癌の場合は侵襲があれば予後が悪くなる可能性がある。膵臓癌の術前診断のように、NOTESにより侵襲を低くすることは癌の進展を遅くする観点からも重要」と話す。

 異なる診療科の医師同士の協力により、NOTESの普及は進むと見る。北野氏は、「低侵襲の治療においては、もはや内科や外科といった旧来の診療科単独で完結しなくなる。消化器内視鏡学における卓越した技術と経験、内視鏡外科学の手術手技を応用していくことが必要」と語る。

 そうした前提の下に、今後、対象も広がる可能性はある。「適応される症例の一つは、PEG のレスキュー」と北野氏は例を挙げる。胃瘻の経皮内視鏡的胃瘻造成術(PEG)の器具脱落を元に戻すものだ。NOTESの適用によって、従来必要とされた大掛かりな手術を不要とする。ほかにも、消化管出血、穿孔の治療、胸郭や腹腔鏡内の観察などが考えられる。既に、NOTESの技術を応用した方法としては、アカラシアの治療において、NOTESを応用した形で実用化が進む.

 NOTESの手技を支援する機材としては、ロボットのように手術を内視鏡の先端で行う機器、縫合閉鎖のための機器、エネルギーデバイスなどの開発が進む。北野氏は、「NOTESの臨床研究は確実に進んでおり、多施設の前向き研究も進行中。今後発展させるには、機器開発と臨床研究による有用性の評価が重要だ」と話す。

 「NOTESが広がるかと言えば、希望する人はいるかもしれないが、なかなか幅広い患者に行われることにならないのではないか」。杏林大学消化器・一般外科講師の阿部展次氏はこう説明する。

 阿部氏が課題として考えているのは、誰に対してNOTESを適用することになるか、および誰がNOTESを行うことになるか。

 NOTESの大きな利点として、整容性の面で切開創ができないことが挙げられる。その観点で適用を考えた時、絶対に体表面に創が付かないというメリットに対するニーズは、一つには美容目的で創ができては困る職業の人、もう一方ではスポーツの選手といったケースで、切開で体のバランスが崩れる懸念を無視できない場合がある。

 また、阿部氏は「豚を使った臨床研究として、NOTESの手技を経験したが、手術時間がどうしても従来法と比較すると長くなる。腹腔鏡を用いれば、短時間で行えるような胆嚢摘出術や虫垂摘出術といった手術を、多くの時間をかけて行う意味は小さいのではないか」と話す。実際、NOTESを行うと、手術時間は腹腔鏡下手術を実施する場合と比較すると、手技の難易度が高いために手術時間が長くなる傾向がある。

 誰が行うかにも課題がある。NOTESは軟性内視鏡を用いるので、内科で軟性内視鏡に慣れている医師が行うケースが想定される。しかし、術中に偶発症が起きた場合、開腹手術に移行する必要がある。外科が付き添う必要があるが、どの医療機関でも対応できるとは限らない。一方で外科医が行うケースも想定されるが、軟性内視鏡の扱いに慣れた外科医が少ない。NOTESに対応した医療体制を整えることが至難の業となる。

 阿部氏は、「NOTESは低侵襲といっても、胃や膣を意図的に穿孔させるため、孔を閉鎖する必要が出てくる。もう一つの手術が加わることになる。胆嚢摘出術のような良性疾患の手術で、NOTESを行うことで、偶発症や合併症を起こすことは避けたい。NOTESの幅広い症例に適応することには慎重にならざるを得ない」と語る。

 課題としては、感染の予防、臓器の把持や切開、止血を確実に行う方法の開発、腹腔内での確実な縫合閉鎖の方法の開発、偶発症例への対応など多岐にわたっている。阿部氏は「今後もごく限定した症例に行う特殊な治療としては重要になる可能性はある。一部の医師が技術を習得する必要もある可能性はある。しかし、一般化していく方向ではないのでは」と話す。

 さらに、体表面の切開創を減らす意味では、NOTESではなくても実現できるとも指摘される。腹腔鏡下手術では、腹腔内に挿入する鉗子の数を減らす試みが進んでおり、最近ではへそだけを切開して腹腔鏡下手術を実施する単孔式の方法が普及しつつある。「Reduced Port Surgery」と呼ばれている。阿部氏は、「切開による孔を減らす観点では、NOTESが広まるのではなく、むしろ単孔式が普及していくだろう」と推測する。



 漫画だけの世界ではなく実際に広まりかけているんですねぇ。

 皮膚を切開しないですむNOTESは、美容面でとても有用です。まあ全員にやるというわけではなくて、例えば人前で肌を露出するようなアイドルのような存在とか、極力侵襲性のない治療を行いたい人などが適用ですかね。正直今の腹腔鏡技術ならばほとんど侵襲性もないですし、術者側からすれば確実に行える分リスクは少ないかなぁと。

 いまのところ私だったら腹腔鏡手術を行ってもらいたいですかね。もちろん傷がないにこしたことはないですけど、それ以上に丁寧に内臓をあつかってほしい。笑


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posted by さじ at 00:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 消化
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