ステロイドは、薬効がほぼ確実という強みもありますが、非常に副作用発症率の高い薬剤でもあります。にもかかわらず、研修などを行っていると、意外に副作用について把握していない薬剤師が多いことに気づかされます。特に、経口ステロイドでは原則禁忌となっている「高血圧症」「緑内障(セレスタミンでは禁忌)」はほとんど無視されている印象さえ受けます。また、目の感染症や、白内障、緑内障は点眼剤でも起きるにも関わらず、ステロイド点眼液の濃度ミスも散見されます(例:リンデロンの点眼液は、「リンデロン点眼・点耳・点鼻液0.1%」と「リンデロン点眼液0.01%」では10倍の濃度差があります)。
■副作用の種類と用法・用量による違い
1)大量(プレドニゾロン換算で1日40mg以上)投与した場合に起きる副作用
高血糖、不整脈
⇒投与数時間後から現れてくる副作用です。
2)中等量(プレドニゾロン換算で1日20mg以上)以上投与した場合に起きる副作用
高血圧、不整脈、高血糖、精神障害、浮腫
⇒投与後、数日以内に起きてくる副作用です。
感染症(細菌)、無菌性骨壊死、骨粗鬆症、満月様顔貌、脂質異常症、精神障害、緑内障、ステロイド筋症、消化性潰瘍、高血糖
⇒投与後、1〜2カ月ごろから現れてくる副作用です。
3)少量でも起きる服用
感染症(ウイルス、結核)、満月様顔貌、二次性副腎不全、骨粗鬆症、脂質異常症、動脈硬化、白内障、緑内障、ステロイド筋症、消化性潰瘍、高血糖
⇒投与後、3カ月以上たってから起きてくる副作用です。
なお、吸入ステロイドは、従来「原則禁忌」の項目に高血圧がありましたが、現在では削除されています。
■小児に注意すべき副作用
小児で特に問題になるのは、成長障害ですが、容姿の変化(ざ瘡、満月様顔貌、野牛肩、多毛、皮膚線条、中心性肥満など)も重要だと捉えられています。
■高齢者に注意すべき副作用
高齢者で、最も注意が必要なのは、感染であると言われます。時として致命的となるからです。そのほか、動脈硬化は心疾患や脳血管障害の原因になりますし、精神障害は高齢者では記憶障害として現れることがあります。ステロイドミオパチーは、筋力低下を起こし、骨粗鬆症と並んでADL低下の原因になります。
■副作用を回避する工夫
1)用法変更による回避
ステロイドの副作用は、一般に、持続点滴のような継続使用時に最も大きくなります。ですから、経口薬などでも、分割する投与回数が多ければ副作用も大きくなります。
可能であれば、分1投与や隔日投与にしますが、炎症性疾患では、症状が日単位で起きるので、隔日にすると服用しない日に治療効果が得られません。
この他、副作用回避のために、次のような用法変更が行われることがあります。
a)短期大量投与:短期間で投与を終了できます。
b)他の療法との併用:漸減しつつ、他の免疫抑制剤などをかぶせる方法です。
c)漸減:少しずつ1日量を減らしていく方法です。後半は0.5〜1mg単位で減らすこともあります。
d)隔日投与:1日おきに連日必要分の2倍量を投与する方法です。
2)薬剤変更による回避
高血圧を回避するのに、電解質作用の少ないベタメタゾンやメチルプレドニゾロンに変更するといった方法です。
3)予防薬投与による回避
消化性潰瘍に対するPPIの投与、骨粗鬆症に対するビスホスホネート系薬剤の投与などです。
4)日常生活の工夫や検査での初期症状チェックによる回避
食事療法を取り入れたり、ものの見え方や感染症初期症状の自己チェックを行うように指示が出ることがあります。また、各種の検査を行うことで、副作用を早期に発見できます。
ステロイド、というと、怖い薬と思われがちですが、医療の分野では幅広く使われます。免疫能を抑制することで日常生活を楽に行えることが多いからです。アレルギーだけでなく、神経内科などの分野でもよく用いられます。というかほとんどの科で使われますね。
もちろん副作用がおきやすいことも知られています。そこは副作用が起きた場合に、主治医や薬剤師と相談すると良いと思います。決して自己判断でどうこうしようとしないようにしてください。