4月18日の朝、栃木県鹿沼市でクレーン車が暴走し、登校中の小学生6人がはねられて死亡するという痛ましい事故がありました。
この運転手には、てんかんの持病があり、事故発生時にてんかん発作が起きていた可能性が指摘されています。新聞報道によると、本人は「普段は夜に飲んでいるてんかんの薬を、事故の前日は飲むのを忘れ、当日の朝に飲んだ」と供述しているそうです。
てんかん患者は、かつて、運転免許を取ることができませんでしたが、2002年に道路交通法が改正され、条件付きでの取得が認められました。「発作が過去5年以内に起こったことがなく、医師が『今後、発作が起こるおそれがない』旨の診断を行った場合」などが、その条件になっています。
ですが、今回と同様の事件は、2008年にも横浜市で起こっています。この時は、てんかん発作で運転手が意識を失ってトラックが暴走し、信号待ちをしていた当時14歳の少年がはねられて死亡しました。2010年3月4日の新聞によると、この少年の遺族が運転手の男性に対して損害賠償を求めて提訴したそうですが、この記事には「遺族は『男性は医師に薬の服用を指導されていながら、飲まずに運転した』と指摘している」と書かれています。
この2008年の事故でも、今回の事故でも、医師や薬剤師の責任が問われている様子はありません。でも、この運転手たちを診察していた医師や、投薬・指導に当たっていた薬剤師は、この事故を未然に防げなかったのでしょうか。そんな思いから、昨年、上記の報道があったときに、抗てんかん薬の服薬状況確認の必要性と、TDM(薬物血中濃度モニタリング)の必要性について、当社の社員には解説をしました。
私たち薬剤師が、同様の事故の再発防止のためにできることは何でしょうか。われわれは薬の専門家として、再発防止策を真剣に考える必要があると思います。
てんかんでは、病状を話したがらない患者も多いので、現実には難しい面も多々ありますが、できる限り、以下の点についてしっかりと確認する必要があると私は考えています。
(1)危険な仕事に従事していないか
(2)TDMを実施しているか
(3)服薬の重要性の説明を理解しているか
(1)は、普段の業務で行われているかと思いますが、なかなか詳細な情報までは得られていないことが多いと思います。
(2)のTDMは、「服薬状況の確認」の意味もあります。欲を言えばデータまで入手したいところですが、そこにまでは至らなくても、検査をしているかどうかの確認はしておくべきです。定期的に血中濃度測定を行っていて、処方変更がないことを確認できれば、少なくとも、きちんと服用を続けていることの証明にはなります。
現在でも、血中濃度データを利用して薬局でTDMを実施しているところがあると聞きますが、抗てんかん薬に関しては、遠くない将来、薬局でのTDM実施が求めらる時代が来るかもしれません。
(3)は、医療機関でもきちんと指導され、理解している患者も多いと思いますが、薬局でも定期的に確認し、常に患者に意識してもらうことが大切です。まれにでも、なんらかの事情で服用できない状況が発生するようなら、剤形変更や、場合によっては薬剤変更で対処できないか、検証する必要があると思います。
薬とは本来、定期的に飲まなければ体の血中濃度を一定に保てず効果にばらつきがでてきます。
今回のように、てんかんに対する薬を1度飲み違えてしまうだけで、日常生活がままならなくなってしまうこともあるのです。
血中薬物濃度が瞬時に分かれば、服薬忘れなどもなくなるんでしょうけれども。。現実的に「パッ」と表示するのは難しいですからねぇ。
やはり患者本人によって服薬したかどうかは決められてしまうというのが現状でしょうか。こういう悲劇を起こさないためにも、飲み忘れを徹底しなければなりませんね。。
http://mainichi.jp/life/health/medical/news/20110420k0000m040172000c.html
裁判所がどう判断するのか注目しています。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110511-OYT1T00122.htm
癲癇患者の運転中の事故の記事が続いてるのは、これまでは「発作を起こす持病」とかでぼかしてたのが、死亡事故で報道しやすくなったということも影響しているのかと勘ぐってしまう。