2010年に骨形成を促進する薬剤が登場したことで、骨粗鬆症の治療は大きな転換期を迎えた。以前からの骨吸収抑制薬についても、服薬コンプライアンスを高めるために投与間隔を長くするなどの工夫を凝らした薬剤が相次いで発売予定だ。骨粗鬆症診療の変化をリポートする。
「骨形成促進薬という全く新しい治療薬の登場は、標準治療薬の一つとなっているビスホスホネート製剤の登場時と同等のインパクトがある」─。新潟大学整形外科学教授の遠藤直人氏は、2010年10月から発売となったテリパラチドについてこう話す。
現在、骨粗鬆症治療の主役であるビスホスホネート製剤をはじめとする骨吸収抑制薬は、破骨細胞の活性を低下させ、骨吸収を抑制して新たな骨破壊を抑制する。しかし、骨吸収を抑制することで骨芽細胞の分化も少なくなり、骨形成が同時に抑制されてしまうという負の側面があった。
これに対し、テリパラチドは前駆細胞の骨芽細胞への分化を促進し骨芽細胞のアポトーシスを抑制することで骨新生を促進する。東京大学整形外科学准教授の田中栄氏は、「骨を鉄筋コンクリートに例えれば、今まで周囲のセメントを作る作業しかできなかったのに対し、これからは鉄筋自体を作ることができるようになったといえる」と骨形成促進薬の登場を歓迎する。
では、テリパラチドの登場によって、骨粗鬆症治療はどのように変化するのだろうか。
田中氏は、「まずは、これまで治療が困難だった、骨密度が非常に低く骨折リスクの高い重症骨粗鬆症患者や骨代謝回転が大きく抑制されているステロイド性骨粗鬆症患者にテリパラチドを積極的に使用したい」と期待を込める。
鳥取大学保健学科教授の萩野浩氏はこれに加えて、「ビスホスホネート製剤には、手術後の患者の骨癒合が遅くなる傾向があるという問題があった。一度骨折した患者が再度骨折を来すリスクが高いことを考えると、骨折後の患者への使用も適しているだろう」と話す。
テリパラチドは、ビスホスホネート製剤を上回る腰椎骨密度の増加や骨折発生率の抑制が示されている。さらに、海外ではテリパラチドによって背部痛発生リスクが低下したとの報告もあり、除痛効果にも関心が高まっている。
もちろん、テリパラチドにも幾つか残された課題はある。まず、現在発売中のものは1日1回の皮下注射剤で、インスリン注入器と似たペン型注入器による患者の自己注射が必要ということだ。
製造販売元である日本イーライリリーでは、患者の不安を少しでも取り除こうと、自己注射の方法を説明したわかりやすい冊子やDVDの配布、患者への電話サポートなどを行っている。
画期的。
自己注射型というのがネックではありますけれど、糖尿病の患者さんでも行えていることなので時間が経てば安心かなと。骨粗鬆症が酷くなるよりも行いたいという人は大勢いるでしょう。