2011年04月20日

プラセボ効果の逆バージョン「ノセボ効果」も正しく作用するという実験

プラセボ効果とは逆の"ノセボ"効果も作用

 プラセボ(偽薬)を服用してもそれが薬だと信じていれば効果がみられがちな「プラセボ(placebo)効果」は一般的に知られているが、その逆も真実であることが新しい研究によって示唆された。

 ドイツ、ハンブルク大学メディカルセンター神経学のUlrike Bingel博士らによる今回の研究では、薬剤の投与量を変更しなくとも強力なオピオイド系鎮痛薬であるレミフェンタニルの使用状況(有無)を信じることで疼痛レベルが大きく変動した。また、患者に薬剤投与の中止を告げるとまもなく、疼痛レベルが急上昇する“ノセボ(nocebo:反偽薬)”効果)がみられたという

 同氏らは、健常ボランティア22人にレミフェンタニルを投与し、治療に対する患者の期待を変化させてその効果を調べた。まず被験者を脳MRIスキャナーに入れ、薬剤投与のための静脈ラインを確保後、痛みが生じる点まで被験者の脚を加熱し、それぞれの被験者が7割の痛みであると最初に評価したレベルに疼痛を設定した。同時に、レミフェンタニルを投与したが、そのことは被験者には告げなかった。

 被験者の自己申告による平均疼痛レベルが100点満点の66点から55点に低下後、(すでに投与していた)同薬の投与を開始したと告げたところ、平均疼痛レベルは39点まで劇的に低下した。“ノセボ”効果を調べるため、同薬の投与中止を告げると、被験者は再び疼痛を感じ始め、疼痛レベルは平均64点上昇し、鎮痛薬をまったく使用しない場合と同程度になった

 また、MRIスキャンでは、試験の各段階で被験者の疼痛や疼痛軽減に対する期待に応じて異なる脳活動がみられ、特に、鎮痛薬を服用していると考えていると、脳の領域は疼痛シグナルが脳や脊髄に到達しにくい状態になっていた。Bingel氏は「この研究は薬効への期待が治療効果に大きく影響するエビデンス(科学的証拠)をもたらす。全体的な治療結果を最適にするため、医師は薬物療法に対する信念や期待、経験をより体系的に評価し、統合すべきである」という。

 別の専門家は「医師は治療に関する患者の教育をうまく行ない、誤った期待や否定的な期待を限定させなければならない。そうすれば、結果がはるかに良くなり、患者が治療により満足すると思われる」と述べている。



 そうなると、ネットで簡単に情報を得られる時代というのはなかなか難しいですね。

 別にだますわけではなくとも、どんな薬も、「効かなかった」という意見などザラに書き込まれています。例えばとある抗うつ薬があったとして、ネットで「これ全然効かなかった」「俺も」「俺も。てか副作用強すぎ」と書かれていたら、誰だって飲み続けるのをためらいますよね。

 薬に個人差はあっても、少なくとも医者は効くと信じて処方しているわけで、それにノセボ効果が働いてしまったら、せっかくの治療もうまくいくはずもなく。
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posted by さじ at 21:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 薬理
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