公立八鹿病院(養父市八鹿町)に末期がん患者らの人生の最期をみとる緩和ケア病棟(ホスピス)が開設されて6年。医師や看護師、理学療法士、医療ソーシャルワーカー、薬剤師、ボランティアがチームとなって昼夜を問わずケアにあたっている。
「患者と家族の心を癒やすのが私たちの仕事」と岩佐加奈子看護師長。抗がん剤治療などはしないが、痛みや精神的な苦痛を取り除き、余命をできる限りその人らしく過ごせるよう支援し、年間120〜130人を送っている。
「看護師の力が発揮できるよう、医師と話し合いを重ねます。スタッフが心を一つにして患者を見送る。みとった家族とスタッフの関係は続き、遺族が集まる年1回のお茶会には多くの人が集まって思い出を語り合います。やりがいは大きいです」
八鹿病院のホスピスは全国的にも高いレベルにある。宮野陽介院長は、千葉県船橋市で開かれた全国緩和ケア指導者講習に参加し、その水準に「確信が持てた」という。
6年間(05年4月〜11年3月末)で受け入れた患者は延べ23235人。「開設当初は“死ぬ場所”と思われていましたが、ホスピスがどのような場所か理解が深まり、患者も家族も思いが変わってきました」と宮野院長は話す。
最上階の11階に高級ホテルのようなロビーや快適な個室、グランドピアノの生演奏を聴けるホールなどがあり、食事も面会も自由。暗い雰囲気はみじんもない。
09年9月から入退院を繰り返している女性は「のんびりと自由気ままに過ごしています。頼れる医師や看護師がいてくれるので安心して過ごせます」と話し、屋上庭園に実ったミカンを摘み取った。
癌に勝つ負けるというニュアンスの世界はもう終わっていて、これからの時代は病とともにどう生きていくべきか、というところに焦点があるのでしょうね。
こういうホスピスが日本中に出来ると、欧米みたいな癌の受け入れ方もできるようになるんでしょうけれども。苦しむだけが闘いではないです。少なくとも私はそうありたい。