2011年04月18日

抗精神病薬の副作用の管理の仕方について

専門医に聞く、抗精神病薬の副作用管理

 全人口の約1%で発症するといわれている統合失調症に対する抗精神病薬の適正使用を活発に情報発信し続けている嶺さん。多剤・大量処方は重大な副作用を引き起こしかねず、治療効果が認められる最小用量を維持することを考える必要性を訴えている。続々と新薬が登場し、製薬企業の競争が激化している中で、抗精神病薬を使いこなす方法や、精神科医と内科医の連携など精神科医療におけるチーム医療の在り方などについて聞いた。

―抗精神病薬の適正使用の基本的な考え方を教えてください。

 臨床使用可能なすべての抗精神病薬に効果があり、ある意味“特効薬”と言えます。しかし、なぜ効くかという理由については、ドパミンD2受容体を遮断するということ以外、ほとんど分かっていません。そのことを大前提とした上で、謙虚な姿勢で使用する必要があります。

 安易な使用や変な思い入れは禁物です。精神療法による対応や、そこまでいかなくても医療者が患者さんの生活習慣や家庭環境、職場環境などをきめ細かに聞いてあげることが大事です。その上で、抗精神病薬を使用することが適切と判断した場合、薬の科学的な性質をきっちり理解して、理論的に使うべきです。

―抗精神病薬にはさまざまな種類があります。どのように使い分けされているのでしょうか。

 抗精神病薬には、大きく分けて「定型薬」と「非定型薬」があります。「非定型」というと、本筋ではない響きがありますが、臨床現場ではこちらが主流になっています。

 抗精神病薬の代表的な副作用として、運動系の錐体外路症状があります。これは、それまで全く運動障害のなかった人が、抗精神病薬を服用したために、パーキンソン病のような症状が出てしまうわけですから、深刻な副作用と言えます。抗精神病薬は、ドパミンD2受容体を遮断することで効果が得られる半面、遮断することによって錐体外路症状を起こしてしまう。「コインの裏表」と表現できるでしょう。
 「非定型」の語源は、効果が得られると、錐体外路症状の副作用が出る可能性が高いという「定型」薬の特徴が見られなかったということに由来します。まずは非定型薬を選択すべきという考え方が臨床現場に浸透したのはそれが理由です。

―非定型薬には全く錐体外路症状の副作用がないのでしょうか。

 非定型薬であっても、使用量が増えれば、もちろん錐体外路症状が出るリスクはあります。非定型薬の使用量を2倍にしたからといって、効果が2倍になることはありません。ですから、大多数の人で治療効果が認められる範囲、これを治療窓といいますが、その用量をまず設定してあげることが理想です。

 PET(陽電子放出断層撮影)検査によって、最大の効果が得られ、しかも錐体外路症状のリスクを最小に抑えることができる「至適最小用量」を設定することが可能だと思いますが、このような検査は研究レベルであり、臨床では行えません。少なくとも、さまざまな薬を併用すると、至適用量を超えやすいので、多剤併用には慎重になるべきです。

―錐体外路症状以外にどんな副作用が問題になりますか。

 もう一つの大きな問題は、代謝系の副作用です。体重が増えたり、糖尿病になりやすくなったりします。これは「至適最小用量」の中でも出てしまう。代謝系の副作用は薬の種類で出やすさが違いますが、薬の受容体プロフィールである程度予測ができます。

 非定型薬はドパミンD2受容体のほか、いろいろな受容体に作用します。例えばセロトニン2C受容体に作用すると、食欲が高進するので肥満になりやすい。それから、ヒスタミンH1受容体に作用すると、眠気が出やすくなったり、体重が増えやすくなったりします。

 これまでの話をまとめると、抗精神病薬を適用できる部分は限られている。限られているけれども特効薬である。特効薬であるけれども副作用があるので、「至適最小用量」を常に推測すべきだ。使用量が少な過ぎると再発してしまうので、量をちゃんと維持できる薬を使うべきだというのがわたしの主張です。最近は、ドパミンD2受容体を安定的に遮断する持効性注射剤や、血中濃度の変動幅を少なくする徐放性の経口薬も、臨床で使用できるようになりました。

―抗精神病薬を処方する精神科医と、嶺さんのような抗精神病薬の副作用を管理する内科医の連携はうまく取れているのでしょうか。

 医師同士のほか、看護師さんや薬剤師さんが連携してチーム医療という形ができてくれば、いろいろな知恵が出てくると思います。ですが、それを阻害している要因が幾つかある。その一つが医療形態です。精神科というのは独特で、収容施設的なところが一面ですが残っています。現場は大変であることはよく分かりますが、法的な対応と医療の対応には多少なりともギャップが生じることは認識しておかなければなりません。そんなに閉鎖的にやらなければいけないのかなという疑問は時に感じます。

 チーム医療の中でリーダーシップを取りながらも、いろいろな職種の意見を聞くことができることが精神科医の素質ではないでしょうか。実際、交流ができているかというと、非常に難しい。また、精神科医には抗精神病薬をはじめとする“向精神薬”のプロとしての自覚を持ってほしいと思います。わたしのような内科医よりは向精神薬に関する知識を持っていて当然です。処方する立場であるのですから。また、例えば認知行動療法が上手であることや、非薬物療法の専門家としての技術も期待しています。



 抗精神病薬は画期的な薬でありながら、使用法はかなりシビアです。素人(経験のない医者)が安易に使える代物ではないです。

 しかし精神科医の使用のもと、しっかり使えば症状を改善する薬です。よくネットで副作用うんちゃらといわれていますが、それをうまくコントロールするのも医者の仕事。安易に患者自身の判断で変えてしまうのは危険です。もし何か症状が出たら、かかりつけの精神科医にそれを伝えましょう。


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posted by さじ at 03:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 精神
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