宮城県で震度6強を観測した東日本大震災の余震で、酸素吸入器を使用して自宅治療していた山形県尾花沢市の女性(63)が死亡していたことが8日、確認された。県警などによると、女性の酸素吸入器は、地震による停電のために使えなくなっていたとみられる。「震災や計画停電などで医療機器トラブルや深刻な医療事故が起こらないか」。こうした危惧は以前から医療関係者から指摘され、警鐘が鳴らされていた。厚生労働省も詳しい実態調査に乗り出すなど、事態の重さを物語っているといえそうだ。
女性は8日早朝、自宅の寝室ベッドで亡くなっているのを家族に発見された。県や県警などによると、女性は気管支炎を患っており、24時間の酸素吸入が必要な状態だったが地震後、吸入器は停止していた。現在、県警で検死を行い、死因を詳しく調べているが、尾花沢市で地震直後から停電したことが影響した可能性は高い。
酸素吸入器は、呼吸するのが困難な患者が、空気中の酸素を濃縮して吸飲する器具。一般家庭の電源で使用できるため、この機器を使用して自宅で治療を続ける患者は多く、厚労省によると、東北と関東地方で7万〜8万人に上る。
しかし、震災後、被災地では停電が続いており、首都圏では計画停電が行われている。多くの患者や病院関係者は「もし、停電で酸素吸入器が止まったら…」という不安を抱いてきた。それだけに、女性の死亡の衝撃は大きく、細川律夫厚生労働相は8日の記者会見で、「地震による停電と患者さんが亡くなったことの因果関係を調査する」と強調。厚労省も情報収集を始めた。
酸素吸入器が停電で止まった場合、事前に携帯用酸素ボンベを準備しておけば一命を取り留めることができる。実際に多くの患者はボンベを用意しているが、酸素吸入器を使う、こうした患者は、体が不自由なケースが多い。突然の停電で暗闇になった際に、素早く酸素ボンベを取り出し、口や鼻に当てるのは容易な作業ではない。
計画停電の際に、酸素ボンベを準備しておくように指導して回った東京都武蔵野市の武蔵野ホームケアクリニック院長、東郷清児医師(48)は、こう問題点を指摘する。
「私が知っているだけでも、病気で本人の体があまり動かず、1人ではボンベから吸うのは難しい患者もいた。事前に分かっている計画停電のときは、看護師に張り付いてもらったが、急な停電では、そういうわけにもいかない」
酸素吸入器メーカーも、各患者に注意を配るが、停電の際に、全員のところに駆けつけて、確認するのは不可能だ。しかも、酸素ボンベは数時間で酸素がなくなるのが普通で、停電が長引けば、病院に行かなければならない。数分間もボンベなしでは呼吸できない患者には、一刻の余裕もない。
より重篤なケースでは、自宅で人工呼吸器やたん吸引機を使う患者もいる。停電時に長時間利用できるバッテリーもあるが、不安は伴う。すぐに助けてくれる家族がいない場合も少なくなく東郷医師は「結局はケース・バイ・ケースで対応を考えるしかない」と話す。
今回の停電は、在宅の患者だけではなく、病院にも混乱を招いた。宮城県によると、県内の災害拠点病院14カ所のうち、石巻赤十字病院など5カ所で自家発電に切り替えたが、今後、停電の頻発や長期化によって発電自体が滞る可能性もある。
東京電力は計画停電について“終了宣言”を出したが、地震や電力不足は今後も予想される。東北大病院災害対策本部の辺見敦総務課長補佐は「やはり停電は診療への影響が大きい」と話した。
やはりというかなんと言うか。。。起きてしまうものですね。
最悪の事態を予想できる、ということは、実際におこることも当然というか。。。何とも傷ましい話です。
やはり今回のことを顧みると、自家発電の方法というのを考えて医療を提供しないといけないなと思います。