2006年06月10日

体内でコエンザイムQ10の合成量が減った場合、どうすればよいのか

スタチン投与で体内のCoQ10が減少  サプリメントによる補充の要否は今後の課題

 金沢大大学院医学系研究科脂質研究講座教授の馬渕宏氏らは、高コレステロール血症患者にスタチンを投与すると体内でコエンザイムQ10(CoQ10)の合成量が減るが、CoQ10サプリメントの摂取によってそれを補充できることを二重盲検比較試験で示した。この結果を、5月19日、東京都内で開催された第6回日本抗加齢医学会総会で発表した。

 試験では、スタチン未投与の高コレステロール血症患者49人をCoQ10群24人とプラセボ群25人に分けた。全被験者にアトルバスタチン10mg/日を投与した上で、CoQ10群にのみCoQ10を100mg/日投与し、その効果をプラセボ群と比較した。

 12週間後の患者の血清コレステロール値は、CoQ10群では275±42mg/dLから192±26mg/dL、プラセボ群では282±36mg/dLから180±26mg/dLになり、ともに有意に低下した。一方、血清CoQ10に関しては、CoQ10群は0.964±0.384μg/mLから2.191±0.757μg/mLとなり有意に増加(127%増)したが、プラセボ群は1.022±0.244μg/mLから0.598±0.203μg/mLと有意に減少(41%減)していた。2群間の血清AST、ALT、CKに有意な差はなかった。

コレステロールとCoQ10の代謝の一部は共通

 コレステロールは体内で、アセチルCoA→HMG-CoA(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA)→メバロン酸→ファルネシルピロリン酸→スクアレン→コレステロールといった流れで代謝合成される。アトルバスタチンなどのスタチン類は、HMG-CoA→メバロン酸の反応を進める「HMG-CoA還元酵素」を阻害することによって、その下流の代謝物であるコレステロールを減少させる薬剤だ。

 スタチン投与でCoQ10が減少したのは、CoQ10の代謝経路が途中までコレステロールと共通のためだ。ファルネシルピロリン酸までは同じで、そこから一部がコレステロール、一部がCoQ10へと代謝される。スタチンでHMG-CoA還元酵素を阻害すると、CoQ10の合成量も減少してしまう。この点については、生化学的な視点から以前より指摘されていた。それを馬渕氏が今回、高コレステロール血症患者で臨床的に確かめた。さらにCoQ10を外部から経口摂取すれば、血中のCoQ10が補充されることも示したわけだ。

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 まとめると、スタチン製剤は、コレステロールの合成経路を阻害する。と、同時に、CoQ10の合成も阻害する。そのため高コレステロール血症の患者にスタチンを投与すると、CoQ10も減ってしまい、心臓が弱くなってしまったりしていた。のだが、金沢大の今回の研究により、CoQ10をサプリメントで補えば問題のないことがわかった、ということですかね。


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posted by さじ at 12:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 内分
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