どこといって異常はないのに腹痛や、突然の下痢や便秘を繰り返す過敏性腸症候群。ストレス社会を反映した現代病とも言われ、働き盛りの成人に多くみられるが、最近は小中学生ら子供の患者も増えている。症状がひどくなると日常生活に支障をきたすだけでなく、不登校や、ひきこもりの原因にもなりかねない。専門医は「たかが下痢と軽く見ないで早めの診察を」と呼びかけている。
過敏性腸症候群(IBS)は、精神的ストレスなどが引き金となって大腸の機能に障害が起こる病気。激しい下痢や便秘、腹部の痛みや不快感、膨満感が一定期間続くにもかかわらず、検査では腸に異常が見つからないのが特徴だ。“消化管の心身症”とも言われ、国内の患者は人口の10〜15%と推定されている。
藤田保健衛生大学坂文種報徳会病院の金子宏教授(心療内科)は、「決して命にかかわる病気ではないが、生活の質が著しく低下するため苦しんでいる患者は多い。性格的にはまじめできちょうめんな人がなりやすい」と指摘する。
症状に対する不安からいつでもトイレに駆け込めるよう各駅停車の電車にしか乗れない、友人と外出や食事ができない…など、仕事や社会生活にも支障を来すIBS。20代から40代に多くみられたが、「最近は10代の子供の患者も増えている」というのだ。
東京都内に住む小学5年生の女児(11)は半年ほど前から、腹痛とともに便秘と下痢を交互に繰り返す便通異常が続いた。ただ、排便すれば腹痛はすぐにおさまり、体重は減らず食欲もある。母親はしばらく様子を見たが、なかなか症状が改善しないので病院を受診したところ、IBSと診断された。中学受験を控えた女児は勉強のために夜更かしが続き、塾などで忙しく食事も不規則になっていたという。
治療は一般的に、腸管運動を改善する薬や腸管の水分をコントロールして便秘と下痢の両方に効果のある薬剤などを使う薬物療法、十分な睡眠や運動、規則正しい食事などを指導する生活指導、さらにはカウンセリングなどの精神療法を組み合わせて行われる。
授業中に頻繁にトイレに行くなどの行為がいじめや不登校、ひきこもりの原因にもなりかねないので、親が早めに気づいて適切な治療を受けさせることが大切だ。
だが実際は、慢性的な下痢や便秘に悩んでいても医療機関に足を運ぶ人は少ないのが実情。「受診が必要なほど深刻な状態ではない」「市販薬で間に合う」などと思い込み、がまんしたり、市販薬を飲んで対処する人が多い。
とはいえ似たような症状を示す疾患には、大腸がんや潰瘍性大腸炎など重い病気の可能性もあるので安易な自己判断は禁物だ。放置したまま症状が悪化すると治療にも時間がかかるため、金子教授は「たかが下痢、便秘と軽く見ないで、おなかの不調が続く場合は早めに医療機関を受診して」と呼びかけている。
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日本人の特性上、何かにつけて精神論で片付けてしまいますよね。IBSもその槍玉に上げられているものの1つです。「お前が弱いから下痢するんだ根性なしめ」みたいなね。まったくバカけた話です。人よりただ感受性が強いだけで、諸悪の根源はそういった偏見を信じ続ける愚か者のほうだというのに。
IBSの低年齢化、それは要するに日本人の排他性が現れた結果かもしれません。学校の先生やご家族の方はどうか理解を。子供たちを傷つけているのは病気のせいではなく、身近に偏見を持つ人がいるためかもしれませんよ。