記憶を妨げる遺伝子の数は記憶を高める遺伝子より数十倍多く、学習で半減することが伊藤悦朗・北海道大客員研究員(神経生物学)らの貝を使った実験で分かった。これら2種類の遺伝子はヒトを含め多くの動物に存在しており、記憶力の向上に役立つ薬剤開発につなげたい考えだ。
ヨーロッパモノアラガイという貝を使って調べた。この貝の脳は構造が単純で、細胞数もヒトの1%以下の数十万個と少ないため、どの細胞が記憶にかかわっているのか調べやすい。
実験では、貝が好む砂糖水と、苦味のある塩化カリウムを15秒間隔で10回、交互に与えた。貝は砂糖水の次に塩化カリウムが来ると学習し、砂糖水が与えられてから15秒後には口を動かさなくなった。
学習前後で反応の仕方が変化した細胞を特定し、働いている遺伝子の数を調べた結果、記憶力を抑える遺伝子「CREB2」が平均約300個存在していたのに対し、記憶力を高める遺伝子「CREB1」は数個しかなかった。CREB2は学習で約150個に半減したが、CREB1の数に変化はなかった。
CREB1、2が記憶にかかわることは知られているが、それぞれの遺伝子の働きが学習によってどう変化するかは解明されていなかった。
砂糖水を与えられた後に誤って口を動かす回数は、目覚め直後の午前中に訓練した方が午後に比べ半分に減り、朝型の学習効率が高いことをうかがわせた。伊藤さんは「どのような刺激が2種類の遺伝子の働きを左右するのかを分析し、効果的な学習方法の提案や記憶障害の解決につなげたい」と話す。
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ほー。記憶力を鍛えるということは、「記憶を忘れさせる遺伝子を抑制する」ということだったんですね。長期記憶にしやすくなる薬など、開発されるのかもしれません(ネットで輸入されている、スマートドラッグなどはこの類の商品かもしれませんが、危ないので手を出すのはやめたほうがいいでしょう)
CREB(サイクリックAMP応答要素結合タンパク質)は、長期記憶に必要なタンパクをコードしている遺伝子の読み出しを調節しているらしいです。詳しくは以下サイトにて。
参考:記憶と老化