日本尊厳死協会が作成している「尊厳死の宣言書(リビング・ウイル)」に署名・登録する人が北海道内でこの1カ月間、急増している。富山県の射水市民病院で起きた人工呼吸器外し問題が新聞やテレビで報道された3月末以降、同協会北海道支部への資料請求が増加しており、秋山隆二支部長(80)は「一過性のものかもしれないが、リビング・ウイルの大切さが次第に認識されるようになってきたことはうれしい」と話している。
同協会によると、全国の登録者は4月28日現在、11万2026人。このうち道内は3月末から148人増え、5499人となった。登録者は70歳代が中心で、毎年平均約100人ずつ増えていたが、この1カ月間で年間の登録者を既に1.5倍も上回るハイペースとなっている。資料請求などの電話も毎日10件程度だったのが3月下旬から倍増しており、多い日には50件以上の問い合わせがあるという。
宣言書には、不治で死期が迫っている場合に延命措置を拒否し、最大限苦痛を和らげるための医療措置を求めることなどが書かれている。登録希望者は宣言書に署名し、手数料(3000円)を払えば、登録番号を付けて協会に保管され、コピーと会員証が登録者に送られる。
1年前に登録した札幌市厚別区で薬局を経営する曽根崎良昭さん(72)も4月初めに、薬局の販促用ダイレクトメールで自らの宣言書を印刷して顧客320人に紹介。曽根崎さんは「登録のきっかけは、投薬など延命措置の経済的負担で妻や子供たちに迷惑をかけたくないとの思いからだった。(登録で)気持ちの整理がつき、不安感が軽減された。尊厳死について知らない人が多かったのでもっと知ってほしいと思った」と個人レベルで活動し、登録の増加に一役買っている。
◇公開講演と個人相談を開催
同支部は7日、札幌市教育文化会館(同市中央区北1西13)で公開講演と個人相談を開催する。講師は協会副理事長の波多野ミキさん。「豊かに生き、尊厳をもって最期を迎えるには」と題して講演する。個人相談は同日午前11時から1時間。秋山支部長らが尊厳死の問題、病気、法律などの相談に応じる。秋山支部長は「寿命が来たら苦痛を伴う延命治療をやめて人間らしい自然死を望む考えを理解してほしい」と話している。
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意思を遺す大事な手段として、「リビング・ウィル」は存在します。日本人は、自分の意思を伝えるということが下手なようです。いえ、下手というより、何も考えていないといったほうが正しいでしょう。
何かあったときにどうするか決めるのでは、遅いんです。明確な意思表示のできる「今」、考えておくべき問題があるのではないでしょうか。
問い合わせは同支部(011・736・0290)。