不眠に悩む人に、眠れないときの対処法を尋ねてみたところ、以下のような結果が得られた。
・医師に相談し睡眠薬を処方してもらう 20.3%
・寝酒をする 29.88%
・市販薬を飲む .4%
・何もしない 42.6%
「不眠症に悩む場合、市販薬やアルコールに頼るのではなく、医師を受診して睡眠薬を処方してもらうべき」
そう訴えるのは、久留米大学の内村直尚助教授だ。内村氏はこのたび、上記アンケートを含む大規模調査の結果、生活習慣病患者(糖尿病・高血圧症・高脂血症)でとくに不眠症が多いこと、そして、睡眠薬を服用することにより、生活習慣病そのものを改善できることを明らかにした。
「不眠症」とは夜の睡眠が十分とれないために、日常生活に支障を来すような場合をさす。とくに、眠れない、寝付けない、熟睡できないといった不眠症状が週3回、1ヵ月以上続いているような人は、その可能性を疑うべきである。
しかし、何故、寝酒や市販薬(薬局で販売される睡眠薬)ではなく、睡眠薬(医師が処方する睡眠薬)でなければならないのだろうか。
誰だって、お酒を飲んで眠くなった経験があるだろう。意識を失うように眠りに落ちたことだってあるだろう。何故、アルコールではいけないのか。内村氏は以下のように答える。
「確かに、アルコールは寝付きをよくします。しかし、アルコールは肝臓で3〜4時間で代謝された後、逆に覚醒作用を起こします。アルコールは寝付きを良くしても、睡眠の質そのものを悪くしてしまうのです」
一方の市販薬としては、近年絶大な人気を誇る睡眠薬「ドリエル」という薬がある。年間20億円以上の売上を誇るこの薬は、「不眠症状を緩和し快適な睡眠を確保することができる」ということで不眠に悩む多くの人々に愛されている。
しかし、実は、このドリエル、正確に言うなれば「睡眠薬」ではない。副作用を利用して催眠効果を得る「睡眠改善剤」である。簡単に言うなら、風邪薬を飲むと眠たくなる、それと似たような性質を利用しているだけだ。ドリエルは「寝つきが悪い」「眠りが浅い」という一時的な不眠症状は対象にしていても、慢性的な不眠は対象にしていない。つまり、ドリエルを飲んでも不眠症は改善されない、ということだ
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重要なのは、何故、多くの人は睡眠薬を服用することに抵抗感があるのか、ということである。この点、内村氏に尋ねてみたところ以下のように答えが返ってきた。
「日本では、ドラマや小説の中で、よく睡眠薬を大量に服用して人が死ぬ場合があります。そのため一般的に睡眠薬は危ないと考えられているのではないでしょうか。しかし、あれは昔の睡眠薬(バルビツール系)です。大量に飲むと呼吸中枢を抑制するため死にいたってしまうのです。
現在の睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)は違います。大げさな話、100錠飲んでも死にません。死ねません。100錠飲む前に寝てしまうでしょう。飲んだところで、せいぜい翌朝、頭が痛くなるぐらいです。それから現在の睡眠薬では、飲んだらやめられなくなる(依存性)、量を増やさなければいけなくなる(耐性)ということもありません。それも偏見です。むしろ睡眠薬より、アルコールや市販薬の方がよっぽど強いくらいです」
「こういった睡眠薬の安全性やアルコールの弊害は、欧米では、中学・高校の段階で保健授業の中に採り入れられています。しかし、残念なことに、日本では皆無に近い状況です。そればかりか、医学教育の中にさえ採り入れられていません。お酒を飲んだらよく眠れる、と思っているのは一般人に限ったことではなく、医師も同じなのです。事実、眠れないというとお酒を勧める内科医もいるくらいです。だからこそ、今後は、睡眠の重要性を含め、広く普及させていかなければならないと考えています」
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とりあえず、寝れなくてものすごいつらい、悪夢を見る、という人は病院へ。できればプロフェッショナルの集う精神科が良いでしょう(心療内科はまた別のジャンルです)
今回は本記事に登場した睡眠薬の分類について少し。
関連:眠れぬ夜に催眠鎮静剤
まず、バルビツール酸系。以前はこれが主流でした。しかし薬への依存性が強く、更に耐性がとてもつきやすいものでした。「少量で鎮静、中等量で催眠、多量で麻酔、過量で昏睡から死に至る中枢神経抑制」という作用を引き起こします。
そして登場するのがベンゾジアゼピン系です。抗不安作用、鎮静催眠作用、筋弛緩作用、抗けいれん作用を有しており、特徴的なのはバルビツール酸系よりも依存はなく、耐性もつきにくいという点です。ただ依存も耐性も「ない」わけではありません。副作用も当然あります。例えば、注意してほしいのは、アルコールと併用すると記憶喪失になることです。このように恐ろしい副作用もありますので、医者の指示どおりに飲みましょう。お酒と睡眠薬はタブーです。