世界的な影響力をもつ科学論文引用回数のランキングで世界1になった大阪大微生物病研究所の審良静男教授(53)の「自然免疫」に関する研究が、花粉症やアトピーなどアレルギー疾患の治療薬開発を飛躍的に進めている。花粉症を完治させる薬は10年以内にできる見通しがついたという。一昨年、ドイツの医学界で最も権威があるとされるコッホ賞も受賞。いま世界中が注目する審良教授の研究とは−。
審良教授は主に、「自然免疫」における病原体の認識システムについて研究してきた。免疫とは一度病気にかかかると体の中に病気に対する抵抗力が備わり、次からかかりにくくなること。
その免疫には自然免疫と獲得免疫がある。自然免疫は外部から侵入してきた病原体をいち早く発見して排除する働きで、獲得免疫は、いったん感染した病原体の再侵入に備える。
これまでは獲得免疫の方が自然免疫より重要な役割を果たすと考えられてきた。しかし実際は、自然免疫が最初に病原体を認識し、その情報を獲得免疫に伝えていることを、審良教授が突き止めた。いわば自然免疫こそ免疫機能の主役。このシステムが明らかになったことで、これまでの免疫の常識が覆され、病気の治療や免疫についての考えを根本的に変えることになった。
特に、体への“侵入者”に過剰に反応して起こる花粉症やアトピーなどのアレルギー疾患の治療法や治療薬の開発がスピードアップされている。審良教授によると「花粉症を完治させる薬はほぼ10年以内にはできそうだ」という。
さらに、日本ではまだ承認されていないがん免疫療法の効果のメカニズムの解明にもつながっている。これまで「なんとなく効きそうだ」と思われていたものの、なぜ効果があるのか分からず、停滞していた分野の研究が、こちらも一気に進むようになった。
ほかにも糖尿病や動脈硬化の治療、臓器移植で起こる拒絶反応への対処、さらには鳥インフルエンザやエイズ(後天性免疫不全症候群)など感染症のワクチン開発にも役立てられている。
自身の研究が注目されていることについて審良教授は「自然免疫の臨床への応用が広がってきたから」とみている。今後は「まだ見つかっていない自然免疫を探すとともに病原体の情報の伝達経路について研究をさらに進めたい」と語った。
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人類の医学が発達していった時に、最後に残る病は「アレルギーと精神病」だと言われてきました。
ところが。審良静男教授は「俺はできるぜ」と。実績もある方なので大いに期待できるでしょう。免疫システムを解明することはすなわち難病がほとんどなくなるということにもなります。自己免疫疾患は結構ありますからね。ぜひとも頑張ってもらいたいところです。