日中の活動時に突然、脱力症状や過度の眠気に見舞われる病気「ナルコレプシー」のうち、未解明だった脱力症状が起きるメカニズムを福島市の福島大共生システム理工学類の小山純正教授(55)らの研究グループが突き止めた。レム睡眠時などに作用する脱力をもたらす脳の細胞群の働きを抑えるガンマアミノ酪酸(ギャバ)が欠乏していることが原因だった。ナルコレプシーは車の運転中に発症した場合、事故につながりかねないなどの危険もあり、根本的な治療法や治療薬づくりにつながると期待される。
小山教授とNPO法人日本ナルコレプシー協会などによると、ナルコレプシーは1000人に3人程度が発症する病気で突然、耐え難い眠気や脱力発作に襲われたり、夜間の睡眠が分断されたりする。発症年齢は10代から20代前半に集中しているのが特徴で、全国に推定20万人いるとされる。発症しても病気と分からず、診断を受けない例も多いとみられている。
小山教授らの研究グループは、脳幹にある「黒質」と呼ばれる神経細胞が分泌する神経伝達物質の「ギャバ」に着目。ギャバは、体を脱力させる細胞群の働きを抑える作用を持つ。小山教授らは、これが欠乏すると脱力発作を引き起こすことをマウス実験で解明した。
黒質は「オレキシン」と呼ばれる物質がないと働かない。オレキシンを分泌するのが「オレキシンニューロン」という神経細胞で、これまではオレキシンニューロンの欠乏が脱力症状などの発症の要因であることまでは分かっていた。黒質やギャバの関係が分かったことで、脱力発作の全体の発症メカニズムが解明されたことになる。
過度の眠気を引き起こす原因については、オレキシンニューロンが欠乏することで覚醒をつかさどる細胞群が機能しないことが理由と分かっていた。脱力発作については研究が進んでおらず、小山教授は旭川医大、東京都神経科学総合研究所の協力を得て約8年前から研究を進めてきた。
小山教授は「今後は臨床研究などを進め、治療薬開発につなげたい」としている。
ナルコレプシーの第一人者である東京都精神医学総合研究所睡眠研究プロジェクトリーダーの本多真医師(48)は「脱力発作のメカニズムの解明は初めてで重要な発見。治療薬をつくる上での指針になる」と評価。日本ナルコレプシー協会の河野通久副理事長(67)は「病気の症状を抑える治療はあるが、根本的な治療法はない。原因究明や治療薬開発などにつながれば」と期待している。
ここまで解明されたのなら、薬もすぐに出来そうですけれどね。まあ臨床応用にはまだ早いのか。でも凄い発見です。こういう睡眠系の疾患は理解されにくいですからねぇ。