ユニ・チャーム、徳島大学、三菱化学ビーシーエル(東京都板橋区)の研究グループは、乳幼児に多い皮膚疾患の一つ「あせも」の発症に、「表皮ブドウ球菌」と呼ばれる細菌が大きく関与していることを突き止めた。
表皮ブドウ球菌は、人間の皮膚などに普通に存在する細菌。食中毒の原因となる「黄色ブドウ球菌」とは異なり、病原性はないとされている。
研究によると、あせもは、多量に発生する汗に含まれる成分を養分に、表皮ブドウ球菌が急増すると発症することが見いだせ、表皮ブドウ球菌があせもの要因という点がわかった。
研究では、まず乳幼児の皮膚を対象に、同一幼児のあせも発症部位と非発症部位での細菌数を比較した。これによると、発症部位の細菌数は、非発症部位に比べて百倍から千倍。加えて、発症部位の細菌は、大部分が表皮ブドウ球菌だった。
次に、臨床実験に賛同した成人の腕を対象に、実験的にあせもを誘発し、その状況を観察した。あせもが発症すると表皮ブドウ球菌の増加がみられた。加えて、抗菌剤を適用した部位と非適用の部位とで、あせもの発症状況を観察したところ、抗菌剤適用部位では、あせも発症率は半減した。
抗菌剤の利用は、あせもの発症抑制に効果を発揮する可能性が高い。ただ、乳幼児を持つ親は、化学物質の利用には拒否反応を示すケースが多く、この物質選定が課題となる。
東京都千代田区の経団連会館で、研究成果を発表した宮澤清・ユニ・チャーム生活科学研究所長は「天然物質のカテキンなどを考えたい」としている。
【用語解説】あせも
「汗疹性湿疹(かんしんせいしっしん)」の別称。汗の出口(汗腺)が、ほこりや角質でふさがれて、炎症が起こった疾患。頭、額、首、脇の下など汗のでやすいところに多くみられる。通常は暑く、湿度の高い夏にみられるが、最近は暖房の影響で冬でもみられるようになった。
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コアグラーゼという血漿を凝固させる酵素をつくるものが黄色ブドウ球菌、つくらないのが表皮ブドウ球菌という分け方らしい。
菌を殺してしまうわけではなく、「菌の増加を防ぐ」ところがポイントでしょうね。菌を殺してしまっては、別の有害な菌が繁殖してしまうこともあります。あまり強力でない程度の抗菌薬でないとダメでしょう。
表皮に常在しているだけなら問題のない表皮ブドウ球菌ですが、最近、点滴用カテーテルを留置しておくことが増えたために、そこから血管内へ菌が侵入してしまうケースが増えたようです。更に抗生物質「メチシリン」に耐性のある表皮ブドウ球菌(メチシリン耐性表皮ブドウ球菌、略してMRSE)も存在するため、抗生物質で取り除くのが困難になってきているようです。
参考:MRSAとMRSEの違いは