重度の脊髄損傷で歩行不能となったマウスに神経幹細胞を移植した上で抗てんかん薬を投与し、失われた機能を回復させる治療法を、奈良先端科学技術大学院大学の中島欽一教授(神経科学)らのグループが開発した。成果は米医学誌ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション電子版に17日発表された。
損傷した脳や脊髄は再生能力が低い。再生治療は約30年前から研究されているが、決定打はないとされ、現状では複数の方法の組み合わせが模索されている。
中島教授らは、マウスの脊髄を損傷させて神経回路を切断、後ろ足が動かなくなるようにした。そこに神経細胞を生み出す神経幹細胞を移植し、てんかんの治療薬として利用されている「バルプロ酸」を1日1回、1週間投与した。
この結果、新しく作られた神経細胞を通じて脳からの指令が後ろ足に伝わるようになり、6週間後には、実験に使用した21匹中15匹が、ぎこちないながらも歩けるようになった。また、残る6匹もある程度の機能回復が見られたという。
中島教授は「回復の程度をより向上させるには他の治療法との併用が必要」とした上で、「今回の成果で、脊髄損傷だけではなく脳卒中など神経細胞が失われることで発症する中枢神経疾患の治療技術の促進が期待できる。将来的にはヒトへの治療にもつなげたい」と話している。
幹細胞移植と抗てんかん薬で脊髄損傷のマウスが歩くことに成功
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失われた神経機能を取り戻せれば、治らないとされていた神経内科ジャンルの疾患の治療法が確立されるのではないでしょうか。
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