テレビや映画で救急車や消防車が通り過ぎるにつれて高いサイレンの音が低くなると、臨場感が強まるが、脳がいったんこの左右の動きと音の高低の対応関係を学習すると、音を聞くだけで止まっている物が動いて見えることが分かった。東北大の寺本渉研究員と立教大の日高聡太助教、産業技術総合研究所の杉田陽一主任研究員が実験し、この効果が半年以上続くことを発見した。
この効果は、パソコンや携帯電話の小さな動画で動きの臨場感を高めたり、視力が低下した高齢者でも動きが分かりやすい映像を作ったりするのに役立つという。研究成果は米オンライン科学誌プロス・ワンに20日発表される。
実験は24〜57歳の男女6人が対象。このうち3人に3分間、画面の左右離れた所で交互に点滅する白い点を見せ、白い点が左で光った場合に「ピッ」と高い音、右で光った場合に「ポッ」という低い音を聞かせた。次に、白い点が1カ所に静止して点滅するのに合わせ、ピッ、ポッという順番で音を聞かせると、点が左から右に動いて見えた。
残り3人に左右逆の組み合わせで実験すると、点が右から左に動いて見えた。効果が生じる条件は、白い点の点滅位置を変えないことと、点滅間隔を0.1秒程度に短くすること。視覚と聴覚の統合が、間脳の視床や大脳の第1次視覚野という情報処理の早い段階で行われている可能性が高いという。
杉田主任研究員は「効果が長く続くことに驚いた。自然の中で生き抜くために音と動きがすぐに結び付くようになったのではないか」と話している
人間ぐらい発達した生き物でもこういう原始的な連絡は取れるんですね。