理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市中央区)の網膜再生医療研究チームは、中途失明の三大原因の一つとされる遺伝性、進行性の難病「網膜色素変性症」の患者の皮膚から、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作り、視細胞に分化させることに世界で初めて成功した。視細胞の分析から、同症の原因遺伝子の働きが解明できる可能性があり、根本的な治療法につながることが期待される。
同症は、光を受け取る網膜上の視細胞が機能を失い、視野が徐々に狭くなっていく病気。厚生労働省が特定疾患に指定し、全国で約2万5千人が治療を受けている。
眼科医でもある高橋政代チームリーダーによると、同症は100種類以上の遺伝子との関係が指摘され、患者によって原因遺伝子が異なる場合がある。だが失明の恐れがあるため、患者の目から視細胞を採取して調べることができない。また採血による遺伝子診断では、2割程度の患者の原因遺伝子しか特定できず、その働きは十分に解明されていないという。
そうした中、研究チームは一昨年、ヒトiPS細胞からの視細胞を作製。この技術を応用し、先端医療センター病院(同市中央区)の患者の皮膚を基に、このほど視細胞を作ることに成功した。これまでに同意を得た7人分を作り、原因遺伝子の分析を進めている。
高橋チームリーダーは「視細胞から原因遺伝子の働きが解明できれば、それぞれの患者に合った効果的な投薬などを実現させたい」としている。
視細胞の異常であれば、幹細胞を使って培養した視細胞での研究によって少しずつ治療法も解明されていくかもしれません。
目という部位は日常生活に大きく関わってきますからね。とても有意義な研究ではないかと。
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