幹細胞を使ってウサギの体内で足の関節と軟骨を再生し、運動機能を回復する実験に世界で初めて成功したと、米コロンビア大学メディカルセンターの研究チームが29日の英医学専門誌「ランセット(The Lancet)」に発表した。
人間に応用できれば、患者自身の幹細胞を使って腰やひざの関節を自然に体内で再生させることが可能かもしれないという。
研究チームはウサギ10羽の前足の関節を取り除き、生物学的に害のない材料で作った支えを埋め込んだ。すると、自然分泌された物質が細胞の成長を促し、幹細胞が失われた関節の軟骨と骨の2つの層を再生した。ウサギは4週間以内に普通に動けるようになった。
採取した幹細胞を体外で培養して体内に戻すのではなく、ウサギの体内で直接幹細胞によって関節が再生されたことも前例がないという。
自然再生した関節は、現在治療で使われている人工関節より長持ちするとみられる。
高齢化が進み、65歳未満で人工関節置換術を受けた患者が再度手術を受ける必要性が高まる中、論文の主著者であるジェレミー・マオ教授は今回の実験について、ひざ、肩、腰、指の関節の再生が必要な患者にとって関節の再生が原則可能であることを示したと指摘。「最終的には臨床に応用できるのではないか」との期待を示した。
ただ、臨床試験前にクリアしなければならない問題は少なくない。たとえば、腰の関節の再生の場合、人間は全体重が2本の足にかかるため、ウサギほど再生が容易ではない。また、多くの患者が病気を患っていたり投薬治療を行っている場合が多く、これも関節の再生に影響を与える可能性がある。
高齢により、まず間違いなく若いころと違うのは、関節の構造を保てなくなることです。軟骨が磨り減ることにより歩くことが容易でなくなります。
お年寄りにとって歩けないことは大きいのです。歩けなくなると活動性が減じ、認知症のような症状を呈することもあります。
現在は人工関節置換術が行われていますが、なかなかハードな手術です。この再生医療が臨床応用できれば多くの老人にとって簡便かつ優秀な治療法となることは間違いありません。
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