ナノ粒子を用いて動脈からプラークを除去し、その後幹細胞を挿入してそれらの動脈の治癒を促すという2段階の手技が将来、アテローム性動脈硬化症患者の治療に用いられる可能性が、ブタを用いたロシアの新しい研究によって示唆された。
ウラルステート・メディカルアカデミーUral State Medical Academy(エカテリンブルグYekaterinburg)の資金援助を受けて実施された今回の研究では、19頭のブタを3群に分け、全例ナノ粒子と幹細胞、またはナノ粒子のみを投与した(幹細胞は2つの異なる方法のいずれかで送達した)。別の18頭にはナノ粒子の代わりに食塩水を投与した。ナノ粒子をブタの心臓に直接送達後、レーザーで加熱し、堆積したプラークを除去した。この手技は“ナノ焼灼(nanoburning)”と呼ばれる。
手技の6カ月後、ナノ粒子投与群ではプラーク容積が平均56.8%減少し、対照群では4.3%増加した。ナノ粒子と幹細胞を併用した群は最も改善し、動脈治癒の徴候がみられた。また、(細胞内または心臓へのパッチ貼付ではなく)マイクロバブルでナノ粒子を送達した3頭ではクロット(血塊)が認められた。
米ニューヨーク大学ランゴンLangoneメディカルセンター心血管疾患予防センター所長のEdward A. Fisher博士は「血管形成術など現在の方法でプラークを除去する際の問題の1つは、プラークの下に面する血管壁の損傷であり、再狭窄率が非常に高い。今回の手技は、血管損傷後に幹細胞を投与することにより血管壁治癒を刺激する能力を活用してこの問題を回避している。ヒトでも同様であれば、将来の選択肢になる可能性がある」と述べている。
ドイツ、フライブルク大学メディカルセンター心血管外科助教授のMatthias Siepe博士らによる2件目の研究では、心臓発作後に組織を治癒させるために幹細胞を用いた。研究の結果、足場と遺伝子操作した幹細胞を埋め込んだラットは対照群に比べて血圧機能が大きく改善したという。
ナノ粒子。非現実的なアイテムが現実の医療領域に踏み込んでますね。
再狭窄しない治療法ができれば、画期的です。
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