虫歯の状況などから児童虐待の兆候をつかむ役割が期待されている小児歯科医の約半数が、虐待を疑われる子どもを診察した経験があるにもかかわらず、このうち1割弱しか児童相談所などに通報していないことが、日本小児歯科学会(朝田芳信理事長)の調査でわかった。児童虐待防止法で定められた通報義務が、子どもの安全を守るべき医療現場で浸透していない実態が浮き彫りになった。
調査は今年6月、小児歯科の専門医1259人を対象に実施。580人から回答を得た(回収率46.1%)。
虐待の疑いがある子どもを診た経験を持つ小児歯科医は、「ある」が26.4%、「少しある」が22.9%で半数近くを占めた。ただ、このうち実際に通報したのは7.0%。全体では3.4%にすぎない。理由としては「虐待かどうかの判断が難しい」「違っていたら怖いので通報できない」などが多かった。
さらに、全体の7.1%が通報義務について「知らない」と回答。「通報先がわからない」も21.6%あった。同学会は虐待対応のガイドラインを作成してホームページに掲載しているが、55.5%がその存在を知らないと答えた。市町村・学校関係者らでつくる「要保護児童対策地域協議会」など、虐待防止に向けた地域の委員になっていると答えたのはわずか4.0%で、地域内での連携も不十分だった。
小児歯科医は、診療や校医としての活動を通して虐待を比較的発見しやすい立場にある。虐待事案の3分の1強を占める育児放棄(ネグレクト)の場合、歯磨きの習慣がなかったり、不規則な食生活で口の中に絶えず食べ物が入っていたりするケースも多い。東京都歯科医師会が被虐待児を対象に実施した2002年度の調査では、6歳未満の子どもで同年代の子に比べて3倍超の虫歯があり、未処置の虫歯も多かった。
虫歯だけでなく、不自然に折れた歯や口内の腫れ、出血なども身体的虐待のサインとなることから、同学会は9月、学会員向けに児童虐待をテーマにした研修を開く。田中英一常務理事は「虐待の疑い事例を発見する小児歯科医は多いが、これまで虐待防止に生かされていなかった。通報は責務であり、意識の向上に努めたい」と話す。
何ともやるせない話・・・
医師は虐待を発見できる最前線にいるわけですが、なかなか発見しても通報という手段に出れるかどうか、というと別問題か。その分医師側をサポートする体制があるのかというと疑問ですし。
ただそれでも子どもに罪はないですからね…。