病院内で麻酔科の医師として働く傍ら、帝京大学の本部情報システム部部長を兼務している澤智博氏の経歴は、とてもユニークだ。国内で医師の国家資格を取得後に渡米。ノーベル賞受賞者を多数輩出しているマサチューセッツ工科大学の大学院に進学した。「当時の米国はドットコム企業が花盛り。医療現場でもIT の知識やスキルがより必要とされる時代が来ると考えた」。澤医師は、進学先としてIT系の名門大学を選んだ理由をそう明かす。
その澤医師が今取り組んでいるのは、コンティニュア・ヘルス・アライアンスのガイドラインに準拠した医療機器の実験である。具体的には、病室内で測定した患者の血圧データを、医療情報システムへ自動的に反映する仕組みを検証している。現状は、医師や看護師が血圧計の数値を目視し、カルテに手書きしたり、自室に戻ってパソコンに入力し直したりしているが、「こうした煩雑な作業をIT化すれば、ヒューマンエラーがゼロになるだけでなく、医師や看護師が患者と直接向き合う時間を一分一秒でも長くできる」。
測定項目は血圧だけにとどまらず、体温や血糖値まで広げたい考えだ。「特に体温は、1日に繰り返し測定するケースが多く、省力化の効果は計り知れない」と、仕様が公開されているガイドライン準拠の体温計の登場を待ち望んでいる。
医療情報システムにデータを無線送信する独自仕様の体温計は既に製品化されているが、「仕様がブラックボックスで、何をするにしてもメーカー任せになってしまう」と採用しなかった。現に、測定した血圧データを医療情報システムに反映するアプリケーションは、澤医師が自ら開発した。将来は、通院患者が自宅で測定した血圧などの健康データを病院のデータと統合して、医師と患者で共有するクラウドサービスに発展させたいという。
面白い。医療と工学の組み合わせというのも、もっと自由化すればいいのにと思いますけどね。
知り合いに、医療工学に興味あるけど工学部ではなく医学部にいったという人がいます。なんかこう、なんか勿体無い。結局医者になって真に興味のある工学は学んでいないという状況。ここらへん自由な綱渡しができれば、優秀な人材が生まれるのになと思います。