指で「くの字形」の図形に触れ、角度の違いを区別する方法で認知症の早期発見に成功したと、岡山大工学部の呉景龍教授と医学部の阿部康二教授の共同研究グループが28日、明らかにした。呉教授によると、触覚による認知症の早期発見法は世界で初めてで、早期診断方法としての実用化や国際診断基準への展開が期待されるという。
人間の指先の触覚は繊細で、角度を区別する際には、空間認知や短期記憶、判断など一連の脳内活動を必要とする。このため、高次脳機能障害である認知症の診断に有効だという。
触覚による診断方法は、主流のアンケート形式よりも患者の生活環境や医師の主観などの影響を受けないため、客観的な診断が可能となる。
診断方法は、アイマスクをした受診者が装置に手を固定、異なる角度のくの字形が立体的に浮き出たプラスチック板を2枚ずつ指先で触り、どちらが大きな角度かを答える。8種類の角度で計80回行い、その正答率から診断する。
実験の結果、軽度認知障害患者とアルツハイマー型認知症患者の正答率は健常高齢者よりも低いことが判明した。
呉教授は「診断内容を周囲に聞かれることなく、簡単に実施できるため、受診者にプレッシャーが掛からずプライバシーも守りやすい」と話しており、装置を小型化して、医療施設や免許センター、家庭などで幅広い実用を見込んでいる。
今は問診などによる方法がメインですが、これだと客観的に、簡便に、そして認知症の患者に不快な思いをさせることなく鑑別できそうです。