厚生労働省の造血幹細胞移植委員会(委員長=齋藤英彦・名古屋セントラル病院院長)は8月5日の会合で、骨髄移植を推進するための骨髄バンク事業として、これまでの骨髄とさい帯血のドナー登録と移植コーディネートに加えて、新たに末梢血幹細胞移植を導入することを了承した。今年10月からのスタートを目指し、厚労省と骨髄移植推進財団が準備を進めていく。
末梢血幹細胞移植は、骨髄やさい帯血からの造血幹細胞移植と同様に、白血病などに有効な治療法の一つ。造血幹細胞は、通常の血液の中に存在するものの、極めて少ないため移植に用いることができない。このため末梢血幹細胞移植では、造血幹細胞を増やす作用のある薬剤「G−CSF」を皮下注射で4−6日間連続して投与して血液中の造血幹細胞を増やし、成分献血と同じ手法で移植に必要な造血幹細胞を採取する。
同移植のメリットは、ドナーにとっては骨髄移植のような全身麻酔による手術や自己血採血を必要とせず、移植患者にとっては骨髄と比べて造血幹細胞が多く含まれるため生着しやすい上、造血回復が早いという点が挙げられる。
この日の会合では、末梢血幹細胞移植の導入に向けて日本造血細胞移植学会の出席者が、2000年4月から5年にわたって、血縁者間で末梢血幹細胞移植を実施したドナーの健康状態について経過をフォローした研究結果を報告。それによると、5年のうちに見られた健康異常について、「末梢血幹細胞の提供による因果関係は否定し切れないものの、明らかなものはない」との結論に至った。また、懸念された白血病などの血液系悪性腫瘍の発生率も、骨髄ドナーと比べて有意差は見られなかったという。
こうした報告に対して委員からは、導入に向けた体制づくりや移植に当たってのインフォームドコンセントを充実させるよう要望する声が上がったほかは、おおむね好意的に評価する意見が相次ぎ、最終的に齋藤委員長が「安全性を確認しながら慎重に、段階的に導入していくことで、委員会として了承したい」と締めくくった。
普通の血液の中に少量混じっている末梢血幹細胞を増幅して移植するのが末梢血幹細胞移植です。
骨髄を採取せずとも幹細胞の移植が出来るということもあり、ドナーの増加に繋がるかもしれません。
未だ治療法が多くない血液内科の領域においては画期的な一歩ではないでしょうか。