2010年08月05日

ビールを飲めるアルコール依存症治療施設

ビールのほろ酔いで依存症の克服を目指す、オランダの治療施設

 アルコール依存症の女性、ジャネッタ・ヴァン・ブリュッヘンさん(51)は、クリニックの椅子にゆったり腰掛けるとタバコに火をつけ、キンキンに冷やした霜つきのビアマグから、ぐいっとビールを飲んだ−−朝食から6杯目だ。以前は人の目を盗んでは、1日にワイン2リットル、ビール3リットルを飲むこともあった。

 ブリュッヘンさんのほかに20代中盤から50代後半の男性15人、女性4人の計19人が、この画期的なオランダのクリニックでアルコール依存症の治療に取り組んでいる。全員、10年以上のアルコール依存症歴。飲むことを禁止はせず、量を管理してほろ酔い状態を保ちながら依存症からの脱却を目指すクリニックだ

 クリニック内の簡易バーではビール500ミリリットルに0.4ユーロ(約45円)をソーシャルワーカーに払う。バーカウンターの冷蔵庫には缶ビールのストックがあり、洗剤の泡が浮いたバケツにはビアマグが漬かっている。そのカウンターの内側でスタッフが、記録帳にあるブリュッヘンさんの名前の横に印をつける。

 09年10月の開設以来、ここオランダ中部アメルスフォールトのアルコール依存症治療施設、マリーバーン・センターでは入院するリハビリ患者たちに、1時間に1回以下、1回500ミリリットルを条件に1日5リットルまでのビールをセンター内で飲むことを認めている。センターが購入するビールは1か月に500ミリリットル缶で4000本。卸売で仕入れて、そのままの値段で売る。資金的にはおおかたを市の予算に頼っている。

 「飲み過ぎを止めること、これが目標です。本人のためにも、周りの人のためにもそのほうがいい」。おそらく欧州初の試みだろうと、同センターの精神科医ユージン・スハウテン(Eugene Schouten)医師は言う。目標を達成するため、「ビールしか飲ませていない」という。

 センターが対象としているのは「最悪の状況」、つまり家族も仕事も住む家もなく、酒を止めたいとも思わないアルコール依存症者だ。

 チームリーダーのピーター・ピュアイク氏は説明する。「アルコール依存症の人は朝起きると、まず不快感を覚えます。それでその不快感がなくなるまで飲むのです。朝食を待たずに、マティーニやポルト酒のボトルをあっという間に飲みきってしまうことさえあります。そうやって酔っ払い、周りの人間の迷惑にもなる。物を盗んだりケンカをしたり、大声で怒鳴ったり。それに飲み過ぎは、肝臓や脳、心臓にも深刻な害を与えます」。

 センターでは午前7時半から500ミリリットルのビールをオーダーできる。「これで朝の不快感をなくせます」。ラストオーダーは午後9時半だが、1度飲んだら1時間我慢しないと次のオーダーはできない決まりだ。「これで血中のアルコール濃度を『ほろ酔い』程度に保てます。頭はクリアなので、医師や精神科医と会ったりもできるし、食事もシャワーもできます。何よりも自分で自分の行動をコントロールできる範囲です」

 1日3回の食事のほかにセンターではビタミン剤や、アルコール量を減らしていくことで夜間に現れる禁断症状を抑える薬も支給する。ホームレスとしての行政への届け出や医療給付を受ける手続きも支援している。

 治療に取り組む人たちは一緒にビリヤードやトランプをして遊んだり、テレビを見たり、マグカップを手におしゃべりを楽しんだりできる。ピュアイク氏は「飲みたいという欲求はいつでもつきまといます。色々な活動や治療、食事などを提供することで、その欲求は和らぎます。ここには平和がある。警察や嫌がらせをする住民に見下されることもない。トラブルに巻きこもうという人間がいないので、仲間との交流を楽しめます」。入所者のマリアン・クロイハ(Marjan Kryger、45)さんも「朝ビールを飲んでいても、誰にも笑われたり、とがめられたりしないから、ここは安心よ」と言う。

 しかし「家にいるような気分になっちゃいけないと思う。出ていけなくなるからね」と言うのは、ボブ・ヴァン・ドブレンさん(28)。家と子どもが欲しいというドブレンさんは、「酒を完全に止めるのではなく、酒量を減らしたい」と思っている。

 最初は依存症者にビールを飲ませるというコンセプトが理解できなかったというソーシャルワーカーのケース・デ・ブロインさん(24)も今では納得している。センターでいくら禁止しても、外で飲むのを止めさせることはできないからだ。「人間に強制はできない。ここにはそれがない。その結果、みんな飲む量が減ってきているし、前よりも節操あるマナーで飲むようになっている。健康状態も良くなっている」

 スハウテン医師は言う。「ここにいる人たちは模範的な市民だとか、働き者の納税者とは呼べないかもしれない。けれど、ここでやっているような方法で人生にもっと喜びが増えれば、周りに迷惑をかけることは少なくなるし、健康にもなる」。ピュアイク氏が続ける。「ここでやろうとしていることは、かれらに尊厳をもってもらうこと。人間なのですから」



 禁止、という抑圧の方向から、自制・節制というコントロールの領域に。

 依存症との闘い方はそれぞれですが、少なくとも酒量を減らすコントロールが出来れば日常生活を営めます。それを目標とすることもアリなのではないでしょうか。リベラルな国だからこそ出来ることではありますが。
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posted by さじ at 03:09 | Comment(1) | TrackBack(0) | 内分
この記事へのコメント
アンフェタミン依存症で母に強制的に二回も精神病院に入れられ十年後にアルコール依存症になってた時は朝9時〜寝るまでビールをコーヒーなんて見向きもせず水分量全てビールでしたね薬物依存症脱皮出来たら次はアルコール更に時折ノンアルコールビールを楽しんで順番があるんでしょうアートスクール卒だし絵画や文筆をしながらね家事なんて出来ないの元来綺麗好きが業わい部屋の中は羨ましいぐらい綺麗だし私はさほど将来像を悲観的に捉えなかったですね次は処方薬を睡眠導入剤を処方して貰う為に病院へるんるん眠れるようになったら仕事を探して採用されて仕事に出てしまったビールは帰宅後に飲めるからあっさりとw(゚o゚)w彼女は自らがビールだけのアルコール依存症になったきっかけは彼女自身が自ら出向いた断酒会がきっかけ更に欧米諸国の書物から日本の精神科医の書物とブレンドして興味本位で気ままに勤勉でした結論はアルコール依存症の治療法はリベラルにてグローバルな視野にて治療法が有ると想定致す手(チョキ)またまたサウナで出会った女性を思い出して
Posted by みか at 2010年08月05日 22:06
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